研究実績の概要 |
本研究は、プリオン構造変換を制御しうる広範囲な化合物群を用いてプリオン蛋白質(PrP)の構造変換に重要な揺らぎを同定すること、さらにPrP以外の蛋白質へも対象を広げることにより、揺らぎにより出現する準安定状態の存在と蛋白質機能発現の関係の解明、低分子化合物による蛋白質の制御技術を確立することを目的としている。 本年度は、PrPCに対する抗体を作成する過程で、一般に考えられている「一つの抗体は一つの抗原を認識する」という概念から外れる、「複数の抗原を特異的に認識する」興味深い抗体を発見した(Kamatari et al., Ishiguro. Identification and characterization of a multispecific monoclonal antibody G2 against chicken prion protein. Protein Sci. 23, 1050-1059 (2014).)。これは本研究のテーマである蛋白質の揺らぎが、異なる二つの準安定状態の存在を可能とし、この異なる二つの準安定状態が異なる二つの抗原に対する認識を可能にしていると考えられる。 また、これまでの蛋白質の揺らぎに関しての研究を俯瞰して、蛋白質内部のキャビティの存在が、蛋白質の揺らぎ、さらに、蛋白質の機能発現に密接に関連することを総説としてまとめた(H. Li, Y. O. Kamatari, Cavities and excited states in proteins, In High Pressure Bioscience (K. Akasaka, H. Matsuki eds.), Springer, 印刷中)。
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