研究課題/領域番号 |
24570181
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
槇 亙介 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (30361570)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | フォールディング / 蛋白質 / 構造形成 |
研究実績の概要 |
本研究の目標は、球状蛋白質のフォールディングエネルギー地形を、実験の立場から定量的に記述し、蛋白質が特異的な天然立体構造を獲得する仕組みを理解することである。この目標を達成するために、蛋白質フォールディングに伴う自由エネルギー変化を種々の構造パラメータによって記述することによって、フォールディングのエネルギー地形を自由エネルギーと構造アンサンブルとの関係として描く。平成24年度には、蛍光共鳴エネルギー移動と各種速度論的手法とを組み合わせることによって、スタフィロコッカル・ヌクレアーゼ(SNase)の構造形成が、非一様に起こることが示唆された。この成果は、国際雑誌Protein Scienceに出版した。 平成25年度は、もうひとつのモデル蛋白質ウマアポミオグロビン(hapoMb)について、幾つかの条件下で蓄積する平衡論的中間体の特徴を、速度論的なふるまいを比較することによって調べた。これまでの研究において、速度論の立場からhapoMbの尿素存在下で蓄積する平衡論的中間体とフォールディング中間体とについて、それらの形成過程が同一であることを明らかにした。酸変性についても同様の検討を行った。これらの成果は、現在論文投稿中である。 平成26年度は、hapoMbについて、塩条件下、pH~2において蓄積する中間体(salt-induced中間体)とpH~4において蓄積する中間体(pH 4中間体)の構造形成機構を比較した。これらの中間体は、分光学的には類似の構造をもつことが示唆されている。フォールディング初期過程においては、これらの中間体は共通の速度論的なふるまいを示した。一方、フォールディング後期過程においては、pH 4中間体は、salt-induced中間体には認められない反応中間体を蓄積することが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度までに得られた成果を国際雑誌Protein Scienceに出版した。また、平成25年度までに得られた成果を、現在投稿中である。hapoMbについて、様々な条件で蓄積する中間体の形成機構を調べることは、中間体を安定化する環境の影響を明らかにする意味で、本研究の幅を広げるものである。これは、これまで作成・改良してきた蛍光連続フロー装置を駆使することによってはじめて可能になったことである。これらの成果は、学会発表はもとより、論文として投稿準備中である。蛍光寿命測定は準備中である。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度の成果に基づき、更に研究を発展させる。 1. 平成25年度、平成26年度は、hapoMbのフォールディング機構に注目して研究を遂行した。hapoMbについて、平衡論的中間体とフォールディング中間体の形成機構が同一であることが明らかになった。さらに、異なる条件下で蓄積する中間体が、熱力学的には区別できない状態であることが示唆された。しかし、より詳細な解析が必要であるため、延長期間においては、さらに詳細な解析を行い、中間体の役割を明らかにする。 2. 蛍光寿命測定用の連続フロー装置の開発の継続。装置開発に伴い、装置の時間分解能、不感時間を評価する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
消耗品等の必要量が予想よりも少なかったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成26年度までに得られた成果をより詳細に解析する。消耗品等の使用を予定している。
|