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2012 年度 実施状況報告書

光合成反応中心において2方向の電子移動を制御する分子機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 24570183
研究種目

基盤研究(C)

研究機関大阪大学

研究代表者

大岡 宏造  大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (30201966)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード光合成 / 反応中心 / 緑色イオウ細菌 / 光化学系1 / ヘテロダイマー / ホモダイマー / 電子移動
研究概要

光合成反応中心の電子移動経路には2回対称軸(C2 軸)に沿って2方向存在する。今日まで紅色細菌の反応中心、植物型のPS IIおよびPS I 反応中心の詳細な立体構造が報告されてきた。これら反応中心コアタンパクはすべてヘテロダイマーであり、2方向の電子移動経路のうち一方のみが優先的に使われている。一方、緑色硫黄細菌やヘリオバクテリアの反応中心はホモダイマー構造をとり、2方向の電子移動経路は等価に機能している。これまで我々は、ホモダイマー型反応中心の片側の電子移動経路のみに部位特異的変異を導入するためのプラットフォーム構築に取り組んできた。本研究は、反応中心の2方向の電子移動がどのような因子で制御されているかを明らかにしていくことを目的としている。しかしながら人工的ヘテロダイマーであるStrep-PscA/His-PscA型反応中心の収率が著しく低く、改善すべく取り組んでみたが、本年度中に解決することができなかった。そこで構築した系の有効性を調べるために、ホモダイマー型のままではあるが、対称な両部位に変異を導入し、野生型反応中心と比較することにした。
具体的には光化学系1反応中心の一次構造とのアライメントから、一次電子供与体P840の近傍にあるアミノ酸残基、L688とV689を推定し、そのCys置換体を作製した。P840のFTIR解析では、バクテリオクロロフィルaの131位ケトン基のC=O伸縮振動バンドの低波数シフトが観測された。またP840+/P840の酸化還元電位の測定では、約30 mVのアップシフトが観測された。これらの結果は、変異導入によるP840周辺の電場構造変化を示しており、構築した部位特異的変異導入系がホモダイマ―型反応中心の分子生物学的解析に十分に有効であることを示している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

これまでホモダイマー型反応中心を改変して人工的ヘテロダイマーにするために、片側の電子移動経路のみに部位特異的変異を導入するためのプラットフォーム構築に取り組んできた。しかしながらStrep-PscA/His-PscA型反応中心の収率が当初期待していたよりも低く、いろいろと改善を試みたが成功しなかった。少量のStrep-PscA/His-PscA型標品を調製することも代案として考慮したが、FTIR解析に必要な量を確保することは困難であった。それゆえ本年度は予定を変更し、変異を導入したホモダイマー型反応中心についてのデータ収集を行うことにした。
一方、緑色イオウ細菌、ヘリオバクテリアの反応中心結晶化については、大幅な進展はなかった。これは研究代表者の指導のもとで結晶化に取り組む予定になっていた学生の急な進路変更により、結晶化に携わる学生が不在となったことに起因する。

今後の研究の推進方策

当初の研究計画に対する大幅な変更は現在のところ考えていないが、今後は以下の項目を重点的に推し進めていく。
1.ヘテロダイマー型反応中心の分取:Strep-PscA/His-PscA型標品の収量が低い主要な原因として、Strep-tactinカラムとの親和性が極端に低いことが挙げられる。Strepタグ、およびタグに続くリンカー部分の配列を検討し直すことにより、親和性の改善に取り組んでいく計画をしている。
2.部位特異的変異による電子移動解析:緑色イオウ細菌のその報告は過去に我々が取り組んだ周辺サブユニットの欠失変異であり、本年度に行った電子伝達成分を含むコアタンパクへの変異導入は初めての事例である。残念ながら現在のところ、ヘテロダイマー型反応中心作製による変異体解析に進むことはできていない。しかしながらホモダイマー型反応中心への変異導入に関しては、これまでの報告事例は一例しかなく、過去に我々が取り組んだ周辺サブユニットの欠失変異に関するのみである。したがって、本年度に我々が行ったコアタンパクへの変異導入は、電子伝達経路解析の糸口となる初めての事例である。特に一次電子供与体P840の近傍にあるアミノ酸残基、L688とV689のCys置換体の作製、およびFTIR解析は、光合成初期電荷分離の研究分野において重要なbreak throughとなる可能性がある。さらなるESRや過渡吸収測定などの他の解析手法も駆使し、詳細な研究を推し進めていく価値がある。これと並行し、二次電子受容体以降の電子移動解析のための変異体作製に取り組んでいく。
3.反応中心の結晶化:すでに微結晶が観察されている標品であるので、光合成反応中心の構造・機能に興味を持っている研究者との共同研究体制を作り上げていく予定である。

次年度の研究費の使用計画

緑色イオウ細菌およびヘリオバクテリア反応中心の結晶化を行うために、結晶化用プレートとスクリーニングキットを購入する予定であった。しかし、研究代表者の指導のもとで結晶化に取り組むことになっていた学生の急な進路変更により、結晶化に携わる学生が不在となり、当初予定の物品購入を取りやめることにした。研究体制を立て直した上で、翌年度に結晶化に必要な試薬類を購入することにする。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [学会発表] 部位特異的変異導入によるホモダイマ―型光合成反応中心の構造改変2013

    • 著者名/発表者名
      浅井 智広、佐野 裕子、加藤祐樹、野口 巧、大岡 宏造
    • 学会等名
      植物生理学会
    • 発表場所
      岡山大学
    • 年月日
      20130321-20130323
  • [学会発表] 緑色硫黄細菌のホモダイマー光合成反応中心において部位特異的変異が一次電子供与体周辺の構造に与える影響2012

    • 著者名/発表者名
      浅井智広、佐野裕子、野口巧、大岡宏造
    • 学会等名
      生物物理学会
    • 発表場所
      名古屋大学
    • 年月日
      20120922-20120924
  • [学会発表] クロロフィル色素のC17位に結合する炭化水素鎖の生合成過程2012

    • 著者名/発表者名
      原田二郎、溝口正、民秋均、大岡宏造
    • 学会等名
      植物学会
    • 発表場所
      兵庫県立大学
    • 年月日
      20120915-20120917
    • 招待講演
  • [学会発表] The gene expression system in the green sulfur bacterium chlorobaculum tepidum by conjugative plasmid transfer2012

    • 著者名/発表者名
      C. Azai, H. Oh-oka
    • 学会等名
      国際原核光合成生物シンポジウム
    • 発表場所
      ポルト(ポルトガル)
    • 年月日
      20120805-20120810
  • [学会発表] Studies on the reduction processes from chlorophyll a estrified with geranylgeraniol to that with Δ2,6-phytadienol in the green sulfur bacterium Chlorobaculum tepidum2012

    • 著者名/発表者名
      H. Oh-oka, C. Azai, J. Harada, S. Miyago, T. Mizoguchi, H. Tamiaki
    • 学会等名
      国際原核光合成生物シンポジウム
    • 発表場所
      ポルト(ポルトガル)
    • 年月日
      20120805-20120810
  • [学会発表] 緑色硫黄細菌の光合成反応中心の部位特異的変異体:一次電子供与体周辺の水素結合構造の改変を例として2012

    • 著者名/発表者名
      浅井智広、佐野裕子、野口巧、大岡宏造
    • 学会等名
      日本光合成学会
    • 発表場所
      東京工業大学
    • 年月日
      20120601-20120602
  • [備考] 光合成反応の分子機構

    • URL

      http://www.bio.sci.osaka-u.ac.jp/~ohoka/

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公開日: 2014-07-24  

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