本研究は、高圧ストップドフロー分光・蛍光測定により、大腸菌由来ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)の野生型とD27E変異体、および、深海微生物Moritella profunda由来DHFR(mpDHFR)の酵素反応の各素過程を測定して、その反応速度の圧力依存性から活性化体積を算出し、得られた活性化体積から各素過程における基底状態と遷移状態間のキャビティーと水和量の変化を検討してDHFRの酵素反応におけるキャビティーと水和の役割を明らかにすることを目的としてきた。 本研究により高圧ストップドフロー装置の基本的な部分は完成し、分光測定は十分に行えるようになったが、酵素に内在するトリプトファンによる蛍光測定はできなかった。改善方法としては、①検出器の感度を上げる、②光源を強力にして光量を上げる、の2つの方法が考えられたが、①の方法では光を各波長ごとに分解する分光器(モノクロメータ)も必要となるため、最終年度の限られた予算では対応できなかった。それゆえ、②の方法を試みたが、やはり検出器の感度が不十分で、蛍光測定ができるようにはならなかった。しかしながら光量を増やしたことにより、分光測定の時間分解能をさらに引き上げられるようになり、将来高感度の検出器を設置することにより、当初の計画よりも高速の反応を追及できるようになった。 また、本研究の期間中に、報文8件、図書2件を執筆するとともに、学会発表24件を行うなど、十分な実績を挙げることができたと考えられる。
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