研究課題/領域番号 |
24570187
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
宗行 英朗 中央大学, 理工学部, 教授 (80219865)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ATP / 自由エネルギー / 生体エネルギー論 / 変異体 / 非平衡 |
研究概要 |
F1-ATPaseは,ATP合成酵素の一部でATPの加水分解,合成と内部の γ サブユニットの回転を共役させる分子モーターである.我々は外部トルクをこのモーターにかけることによって野生型F1モーターが非常に高い自由エネルギー変換効率を持つことを示してきた.本研究ではこの高い効率を生むメカニズムを明らかにするために,様々な回転特性を持つ変異体について野生型と並行した解析を行うことを目的としている. 2012年度は,βサブユニットのE190D変異体,G158S変異体,γサブユニットのΔAla275変異体についてその回転特性を検討した.βG158S変異体についてはPi存在下に見かけ上ADPMg阻害に似た長い停止が見られたが,更に確認が必要である.γΔAla275変異体については,平均回転速度の外部トルク依存性が野生型と顕著に異なっているように見える結果が得られた.これはトルク発生ステップと化学反応ステップの関係についての情報を与える可能性のある非常に興味深い知見であるが,実験回数が少ないため,今後慎重に実験を繰り返して確認をしてゆきたい. βE190D変異体は外部トルクを加えた場合のストールトルクが,ATPの加水分解の自由エネルギーから計算される値より有意に小さいことが分かり,この変異体では uncoupling が起こっていることが明らかになった.回転と反対方向の外部トルクがかかった状態での実際の回転のトラジェクトリを観察すると,逆回転をする時には連続して逆方向に回るステップがよく観察され,Dwell Time Histogram上でも短い時間で起こるステップが非常に多くなっていることがわかった.また外部トルクによる平均速度の依存性も野生型とは顕著に異なっていることが分かり今後更にデータを集め調べてゆく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目としては,興味のある性質を示す変異体が見つかりつつあり,βE190D変異体についてはある程度確実な結果も得られて学会発表までは行えた.その他の変異体についてはまだデータの確実性に問題があるが,少なくとも調べる価値はありそうで,全体としておおむね順調であると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
まず最も重要なことはデータの信頼性を確保することである.そのためには実験を繰り返し,実験担当者の技量の向上を目指すことが必須条件であり,効率的に実験が行えるように研究体制を更に整える必要がある.また研究計画にあったADPによる阻害を受けにくい変異体(βT165S,G181A,Y341Wの3重変異体)についても検討を開始する.そして研究期間内に確実な2用の論文を出版する.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は,消耗品と旅費の予定しかなかったが,DNAの塩基配列決定にかかる費用が「その他」の区分になること,高速カメラが不調でその修理費がやはり「その他」の区分で出さざるを得ないことから,平成24年度からもちこした分も含めて「その他」出支出するものが増える見込みである.また,研究の進捗状況によって英文校正,出版に予算を使うことになる可能性もある.
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