研究課題/領域番号 |
24570199
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
松本 顕 順天堂大学, 医学部, 准教授 (40229539)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 概日リズム / 時計遺伝子 / ABCタンパク質 / ショウジョウバエ / 転写後調節 |
研究概要 |
本研究の目的は、ショウジョウバエの新規時計関連遺伝子CG9281の機能をpost-transcriptionalな側面から明らかにすることである。本年度の主目標は、CG9281の局在性、および、他の時計遺伝子への影響の同定であった。 定量的PCRを行うと、CG9281のノックダウンでは、時計遺伝子perとtimの発現量がピーク時刻に増加していた。CG9281の発現自体には周期性はない。また、CG9281のドミナントネガティブタイプを培養細胞で強制発現すると、timの発現量が増加した。よって、CG9281の概日時計機構への関与は、per/timを介した間接的なものと推測された。 また、抗CG9281抗体を作製し、細胞内での局在領域の同定および組織特異的な発現の同定を試みた。培養細胞に対して免疫染色を行った結果、細胞質が強く染色され、核や細胞膜ではシグナルが観察されなかった。これらはCG9281が直接的に膜輸送に関与しているわけではないことを示唆しており、膜貫通領域を持つパートナー因子の検索は本年度で打ち切りとした。幼虫および成虫に関しても免疫組織染色を試みたが、時計細胞での特異的な染色像は得られなかった。CG9281は時計細胞特異的なノックダウンスクリーニングで同定された遺伝子であり、今回の結果はこれと矛盾する。組織染色で使用可能な抗体であるかの確認も含めて検討中である。 次年度以降の予備実験として、質量分析機によるCG9281相互作用因子の同定を行ったところ、思いがけず時計関連タンパク質CK2αが免疫沈降されていた。そこで、その突然変異体TikのバックグラウンドでCG9281をノックダウンした所、活動リズムに相乗効果が見られた。TikはPERタンパク質のリン酸化因子であることから、CG9281はTikを介して概日時計に影響する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始当初は全く不明であった、目的遺伝子CG9281の機能に関して、PERのリン酸化に関与することを示唆する結果が得られたのは、大きな進展であった。一方、CG9281の組織特異的発現に関しては、時計細胞で発現している証拠は見出せなかった。思いがけず進展した部分と、課題が残った部分とが相半ばする状態なので、全体的にはおおむね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の結果から、CG9281とTikとの相互作用が示唆された。次年度は、この相互作用が直接的なものかどうかの検討を主にプルダウンアッセイなどを用いて行う。また、ドミナントネガティブ系統も作製し、生体内でのPERのリン酸化に変化があるかどうかを調べる。もしも、相互作用が間接的であった場合は、当初の計画通り、時計遺伝子の翻訳過程への影響から調べ始める予定である。これとは別に、本年度は明瞭な結論を得ることができなかった免疫組織染色による発現組織の同定も課題である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は明瞭な結論を得ることができなかった免疫組織染色による発現組織の同定を引き続き行うための消耗品費(13万円)、新たに来年度から開始するCG9281とTikとの相互作用の解明、ドミナントネガティブ系統作製などの実験に用いるための消耗品費(100万円)および、国内学会参加のための旅費(10万円)、論文投稿料(15万円)を予定している。
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