研究課題/領域番号 |
24570200
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
和賀 祥 日本女子大学, 理学部, 教授 (60222402)
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キーワード | ORC / グアニン四重鎖 / 分子生物学 / 複製開始点 |
研究概要 |
これまでは、ヒトORCのGU-richなRNAへの結合に関する解析を行ってきた。2013年度は、さらに一本鎖DNAを含めた解析を進めた。この方向での研究の展開は当初の予定にはなかったことである。これは、近年フランスの研究グループが報告した、ヒト複製開始点の多くにグアニン四重鎖(G4)の形成可能なDNA配列(G4モチーフ)が存在するという結果を受けて、この結果とこれまでの我々の解析結果との関連性を先行して調べることが重要と判断したためである。 過去の解析結果と一致するように、我々の解析からもヒトORCがG4モチーフをもつ二本鎖DNAに選択的に結合することを示す結果は得られなかった。つまり、二本鎖DNAへの結合に関してはヒトORCには明瞭な特異性はない。ところが、一本鎖DNAを用いた結合解析から、G4モチーフ配列をもつG-richな一本鎖DNAにヒトORCが選択的に結合することを見出した。この結合条件下でG4モチーフが実際にG4を形成することも確認できたことから、ヒトORCがG4構造に結合する可能性が示唆された。以上のように、ヒトORCの一本鎖DNAへの結合特異性がヒト複製開始点の特徴と一致したことから、我々の研究成果はこれまで長い間解決されてこなかった高等真核生物の複製開始点の確立機構のしくみを明らかにするきっかけとなる可能性がある。 ヒトORCに関する解析をさらに進めた結果、ORC1サブユニットがG-richな配列への特異的な結合活性を有すること、そして、ORC1の結合ドメインの同定に成功した。そのドメインの立体構造予測をした結果、興味深いことにDNAメチルトランスフェラーゼのドメインと類似することが分かった。今後は、ORCの構造解析も取り入れながら、研究を進めていく必要があると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の中で明らかとなったヒトORCのG-richなRNAへの特異的な結合というORCのもつ新しい性質に関連して、解析対象を一本鎖DNAに広げて進めることによって、ORCのG-rich配列への結合が生物学的に重要な意味をもつ可能性が高くなってきた。このような展開はまったく予想外であったが、研究は大きく前進したと考えている。特に、ヒト複製開始点はどのような仕組みで確立されていくか、という長い間未解決である重要な問題を解く鍵となり得る知見を得られたことは大きな研究成果である。
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今後の研究の推進方策 |
ヒトの複製開始点の形成機構は未だ解明されていない重要な問題の一つである。その問題解決につながる可能性のあるORCのG4モチーフへの結合という特質について、今後さらに詳細な解析を進めていく。特に、ORCが実際に何を認識して結合するのかについては、ORC1とその結合するDNAに関する構造生物学的な解析を進めていく。また、ORCのG4モチーフへの結合の生物学的な意義を明らかにするために、G4モチーフに結合できない変異ORCを作製し解析を進めていく。以上を当初の予定と合わせて進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
これまでに得られた新しい知見はRNAを対象とした解析からのものだったが、さらに一本鎖DNAに解析対象を広げたところ、予想外の結果が得られた。この結果は近年報告されたヒト複製開始点の新しい特徴と関連性が深いものであったため、当初の予定になかったグアニン四重鎖に着目した解析を進めた。そのため、当初予定していた網羅的な解析を行うことができなかったために生じたものである。 当初の予定通り、ORCの結合する配列の網羅的な解析を行うために使用する。さらに、ORCのグアニン四重鎖形成可能配列への結合の生物学的な意義を明らかにするために、ORCの構造生物学的な解析を進めるためにも使用する。
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