マイクロRNAは生体内の様々な生命現象に関与していることが知られているが、その発現異常はがんを初めとした重篤な疾患に関与することが近年注目されている。本研究では、ヒト肺がん細胞株A549細胞において、miR-139-5pと miR-139-3pがともにDNA脱メチル化促進後に発現上昇を示したことから、miR-139に焦点を当て、エピジェネティックな発現制御機構の解明を目指した。定量的RT-PCRによるDNA脱メチル化促進後の発現量解析では、A549細胞においてmiR-139と宿主遺伝子PDE2Aはともに発現上昇を示した。一方、TIG-1細胞においては、PDE2Aのみ発現上昇傾向を示し、miR-139の発現に顕著な変化を認めなかった。次に、miR-139の上流約1-kbp領域をルシフェラーゼ遺伝子上流に挿入したレポータープラスミドを作製し、A549細胞でルシフェラーゼアッセイを実施した。結果、miR-139上流領域を挿入したレポータープラスミドのルシフェラーゼ活性はコントロールと比較して増加した。以上の結果から、A549細胞において、miR-139は独自の発現制御領域を持つ可能性が明らかとなった。miR-139とPDE2AがそれぞれDNAのメチル化による発現制御を受けているかどうか確認するため、バイサルファイトシーケンシングによりmiR-139上流領域のCpG配列およびPDE2Aバリアント3転写開始点上流領域のCpGアイランドにおいてメチル化解析を行った。結果、A549とTIG-1両方の細胞で、miR-139上流領域は高メチル化、PDE2Aバリアント3転写開始点上流領域は低メチル化を示した。
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