研究課題/領域番号 |
24570202
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
大谷 清 関西学院大学, 理工学部, 教授 (30201974)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 転写 / がん / E2F / RB / p53 / ARF |
研究概要 |
1. 転写因子E2Fが癌抑制因子RBの機能欠損を特異的に感知する機構を解析し、以下のことを明らかにした。 1) 生理的なE2FとRBの制御を外れたE2Fのリン酸化部位の差の解析: E2F1のリン酸化を受けうるアミノ酸70箇所全てに関して、リン酸化を受けないアミノ酸に置換した変異体の発現ベクターを作製し、細胞に発現させてウエスタンブロットにおける移動度を指標にリン酸化の程度を検討した。その結果、E2F1のセリン375番とセリン403番の変異体において、生理的なE2F1に見られる最も高リン酸化型のバンドを生じなくなった。従って、これらのアミノ酸部位のリン酸化が、生理的なE2F1の生成に関わっている可能性が示唆された。 2) RBの機能欠損に特異的に反応するために必要なプロモーター特性の解析: 純粋に「Sp1+GC繰り返し配列」をもつレポータープラスミドを作製してE2F反応性を調べたところ、生理的なE2Fには反応せず、RBの制御を外れたE2F特異的に反応した。従って、この配列がRBの制御を外れたE2F特異的に反応するコンセンサス配列として初めて同定された。 3) RBの制御を外れたE2Fと特異的に相互作用する因子の同定: 過剰発現したE2F1を免疫沈降した際に特異的に共沈する因子を質量解析で検索したところ、DDX5を同定した。DDX5の発現ベクターを作製し、E2F1によるARFプロモーターの活性化に及ぼす影響を検討したところ、活性化の増強が認められた。従って、DDX5はRBの制御を外れたE2F1と協調的に作用する因子である可能性が示唆された。 2. RBの制御を外れたE2Fで特異的に活性化される新たな標的遺伝子の同定: DNAマイクロアレイを用いてRBの制御を外れたE2Fで特異的に活性化される標的遺伝子を網羅的に検索し、新たな標的遺伝子を9個同定した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. 転写因子E2Fが癌抑制因子RBの機能欠損を特異的に感知する機構の解析 1) 生理的なE2FとRBの制御を外れたE2Fのリン酸化部位の差の解析: E2F1の70箇もあるリン酸化を受けうるアミノ酸全てに関して変異体を作製することにより、その変異によって最も高リン酸化型である生理的なE2F1を生じなくなるアミノ酸部位を2カ所同定できた。従って、生理的なE2F1の生成に関わるリン酸化部位の少なくとも一部は同定されたと予想されるため。 2) RBの機能欠損に特異的に反応するために必要なプロモーター特性の解析: 生理的なE2Fには反応せず、RBの制御を外れたE2F特異的に反応するコンセンサス配列が初めて同定されたため。 3) RBの制御を外れたE2Fと特異的に相互作用する因子の同定: RBの制御を外れたE2F1と協調的に作用する因子としてDDX5が同定されたため。 2. RBの制御を外れたE2Fで特異的に活性化される新たな標的遺伝子の同定: RBの制御を外れたE2Fで特異的に活性化される新たな標的遺伝子が9個も同定されたため。
|
今後の研究の推進方策 |
1. 転写因子E2Fががん抑制因子RBの機能欠損を特異的に感知する機構の解析 1) 生理的なE2FとRBの制御を外れたE2Fのリン酸化部位の差の解析: 同定したE2F1のリン酸化部位が本当に生理的なE2Fの生成に関わっているか否かを検討する。そのために、RBの制御を外れたE2F活性特異的に応答するARFプロモーターを用いたレポーターアッセイにより、その変異体のRBの制御を外れたE2F活性が亢進しているか否かを調べる。また、RBを強制的に不活性化した際にその部位のリン酸化が減少するか否かをリン酸化部位特異的抗体を作製し検討する。 2) RBの機能欠損に特異的に反応するために必要なプロモーター特性の解析: RBの制御を外れたE2F活性特異的に反応するコンセンサス配列として同定された「Sp1+GC繰り返し配列」のSp1結合配列とGC繰り返し配列のどちらがRBの制御を外れたE2F活性特異的に反応するのに重要で有るのか検討する。そのために、それぞれの部位に変異を導入したレポータープラスミドを作製し、E2F反応性を調べる。 3) RBの制御を外れたE2Fと特異的に相互作用する因子の同定: DDX5がRBの制御を外れたE2F1と協調的に作用する因子であることを検証する。そのために、DDX5に対するshRNAの発現ベクターを作製し、DDX5発現のノックダウンがE2F1によるARFプロモーターの活性化を抑制するか否か検討する。さらに、DDX5の過剰発現およびノックダウンが過剰発現したE2F1による内在性ARF遺伝子の発現に及ぼす影響を検討する。 2. RBの制御を外れたE2Fで特異的に活性化される新たな標的遺伝子の同定: 新たな標的として同定した9個の遺伝子の中から代表的な遺伝子を1つ選んで、プロモーター解析やRBの制御を外れたE2Fによって発現誘導される生物学的な意義など詳細な解析を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
リン酸化部位特異抗体受託作製43万円、細胞培養培地5万円、牛胎児血清10万円、オリゴDNA 8万円、トランスフェクション試薬13万円、レポーターアッセイ試薬14万円、DNA修飾酵素6万円、プラスチック器具12万円、その他試薬5万円、その他国内旅費成果発表5万円、学会誌投稿14万円、校閲5万円、以上合計140万円を予定している。
|