転写因子E2Fは、増殖刺激によって生理的に活性化されると、細胞増殖に関わる遺伝子を活性化することにより、細胞増殖に中心的な役割を果たす。一方E2Fは、代表的ながん性変化であるRBの機能不全によって活性化されると、アポトーシスや細胞老化に関わる遺伝子を活性化することにより、がん化抑制に極めて重要な役割を果たす。しかし、E2Fが増殖刺激とがん性変化を如何に識別し、細胞増殖とアポトーシスまたは細胞老化との相反する作用をもつ標的遺伝子の発現を如何に仕分けているのかは明らかにされていない。E2Fによるがん化抑制機構を探るために、E2FがRBの機能欠損を特異的に感知する機構とRBの機能欠損で特異的に活性化される新規E2F標的遺伝子を検索し、以下のことを明らかにした。 RBの機能欠損によって活性化されたE2F1は、増殖刺激によって生理的に活性化されたE2F1に比べて低リン酸化型であり、E2F1のリン酸化部位変異体を作製して検討した結果、リン酸化の違う部位の候補を複数同定した。E2F1と特異的に相互作用する新規因子を免疫沈降における共沈およびYeast two-hybrid法を用いて検索し、55個の候補因子を同定した。RBの制御を外れたE2Fによって活性化されるが、増殖刺激によって誘導された生理的なE2Fによっては活性化されない新規標的遺伝子をDNA microarrayを用いて検索し、新規標的遺伝子を8個同定した。
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