研究課題/領域番号 |
24570204
|
研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
木下 和久 独立行政法人理化学研究所, 平野染色体ダイナミクス研究室, 専任研究員 (60447886)
|
キーワード | 該当なし |
研究概要 |
本研究の目的は、染色体構築に必須なタンパク質複合体「コンデンシン」を組換えサブユニットから再構成し、その分子機能と制御機構を解明することである。研究代表者はコンデンシンIとIIの二種類の複合体を高い収量と純度で発現・精製できる発現系を構築し、さらにこの系の発現・精製効率の改善を試みた結果、生化学的アッセイに用いるのに十分量の高濃度かつ高純度の精製コンデンシン複合体の再構成に成功している。当該年度(平成25年度)における研究実施計画のもと、平成24年度において先行して進展のあったコンデンシンI複合体の機能解析を中心に研究を推進した。コンデンシンIの三つのnon-SMCサブユニット(CAP-D2、CAP-G、CAP-H)の役割を明らかにするために、それぞれのnon-SMCサブユニットを一つずつあるいは複数欠失させた欠失変異型複合体を再構成し、これらの再構成複合体を用いて染色体構築過程における機能検定をおこなった。その結果non-SMCサブユニットのうちHEATリピートドメインを持つ二つのサブユニットCAP-D2とCAP-Gが、その構造的類似性から予想されていた類似した機能ではなく、両者があたかも拮抗的に作用することによって機能していることが明らかになった。さらに組換えサブユニットの一つに異なる蛍光タンパク質を標識した複合体を再構成し、二種類の欠失変異型複合体の挙動を同時に追跡できる新たな機能アッセイ系を構築した。この新規アッセイ系を用いることによって、CAP-D2とCAP-Gの二つのHEATサブユニットの拮抗的作用がM期染色体構築における染色体軸の形成に必須であることを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の当初の目的の通り、組換え体サブユニットから再構成したコンデンシン複合体を用いた生化学的アッセイによって研究を推進中である。本研究において、コンデンシンI特有の機能を生み出す三つのnon-SMC制御サブユニットCAP-D2, CAP-GおよびCAP-Hの役割が明らかになりつつありここまで順調に進展してきた。本研究独自のアプローチによって従来の研究手法では得られなかった新たな知見が蓄積してきており、当初の研究目的をほぼ達成できている。
|
今後の研究の推進方策 |
現在までの二年間に得られた成果に基づいて、今後も組換えサブユニットからなる再構成コンデンシン複合体を用いた研究を推進する。コンデンシンI複合体固有の機能の解析が先行し、その成果としてコンデンシンIのnon-SMCサブユニット特異的な役割が明らかになってきていることから、今後も継続してコンデンシンIの解析を研究の中心に据えて遂行する。特にnon-SMCサブユニットの分子間相互作用および分子修飾による制御のメカニズムを明らかにすることを目標として、引き続き研究を推進していく予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究が順調に進み、タンパク質の発現および精製にかかる分子生物学実験用の試薬、実験器具および消耗品の購入が予想よりも少なく済んだため。 現在までの研究の遂行時と同様に、研究費の大半はタンパク質の発現および精製にかかる分子生物学実験用の試薬、実験器具および消耗品の購入に研究費を使用する予定である。また研究を推進するうえで必要な研究の情報収集と討論、および研究成果の発表のための旅費を含めた費用としても、研究費を使用する。
|