研究課題/領域番号 |
24570205
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
松本 清治 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, 研究員 (40190532)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | Cdc7 / DNA複製 / 複製タイミング / 複製開始点 / 分裂酵母 / Hsk1 / Rif1 / Mrc1 |
研究概要 |
真核細胞のDNA複製はゲノム上多数散在するoriの中、実際には一部から開始し、ゲノム領域によりS期内で複製開始される時期も異なり、S期初期、中期、後期複製領域に区分できる。Cdc7は複製開始の部位とタイミングを決める重要な因子と考えられるがその作用機序は大部分不明である。我々はこれまで分裂酵母のCdc7ホモログであるHsk1の変異を相補する変異としてMrc1(高等動物Claspinの機能的ホモログ)とRif1を同定し、Rif1とMrc1はそれぞれ異なる機構で複製開始部位選択を制御することを示唆する結果を得ている。 これら制御機構の具体的な解明を目的にH24年度はMrc1とRif1の部分欠失および点変異を作成した。Mrc1(1,019 aa)の782-879aa配列(HBS)を欠失させた変異Mrc1のみゲノム上に持つ株は、HU耐性(正常なcheckpoint機能)を示し、かつhsk1-89変異を部分的に相補し、Mrc1のHBS領域がCdc7/Hsk1機能のバイパスに重要であることを確かめた。Mrc1はHsk1と結合しHU処理により高度にリン酸化されるが、HBS欠失Mrc1はHsk1との結合が見られず、HU処理時の高リン酸化も起きない。一方HBS中のSer/ThrをすべてAlaに変異した変異Mrc1株でもHU処理時の高リン酸化が見られることからHsk1がHBSを含む領域に結合し、HBSの外部をリン酸化することがHU処理時のMrc1の高リン酸化に重要であることが考えられた。 Rif1機能に関連する遺伝子を単離するためRif1強発現による増殖阻害を抑圧する変異をLEU2断片およびkanR断片のゲノムへのランダム挿入法によりスクリーニングし、これまでに多数の候補を単離し、現在それらを解析中である。またRif1の強発現による細胞増殖阻害能にはRif1のC末140アミノ酸は不要であった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Mrc1あるいはRif1欠損によるCdc7/Hsk1機能バイパスのメカニズムと複製起点選択の分子機構の解明を目的に、Mrc1およびRif1の部分欠失変異体や点変異体を作製し、Cdc7/Hsk1機能をバイパスするのに必要な領域(変異するとバイパスできる領域)を決定しようとしている。 Mrc1に関してはMrc1(全長1,019 aa)の782-879aa配列(HBSと命名した)を欠失する変異Mrc1をゲノム上に持つ株を作成した。この株は正常なcheckpoint機能を保持しつつhsk1-89温度感受性変異を部分的に相補し、Mrc1のHBS領域がCdc7/Hsk1機能のバイパスに重要であることを確かめた。また、HBS領域がMrc1-Hsk1結合に必要であることも明らかにした。更に詳しい機能解析を進めるため、このHBS領域を中心に多数の点変異を導入した。現在も更に多くの点変異を作成し、hsk1-89バイパス能を指標としたスクリーニングを進めている。 一方、Rif1機能と関連する遺伝子を探索する目的で、Rif1強発現による増殖阻害を抑圧する変異をLEU2断片およびkanR断片をゲノムへランダムに挿入する方法によりスクリーニングし、これまでに多数の候補を得て現在それらを解析中である。
|
今後の研究の推進方策 |
Mrc1のHBS領域に集中的にランダムに変異を導入し、hsk1温度感受性変異株を相補できる変異のスクリーニングを更に進めて、Hsk1機能のバイパスに重要な配列を同定する。また、HBSを含む領域にHsk1が結合すると予想されるので、結合に必要な領域をできるだか絞り込む。その領域に結合するHsk1以外の蛋白質の有無も調べる。 Rif1についてもHsk1と結合する領域を絞り込み、同様にその領域に結合するHsk1以外の蛋白質の有無を調べる。また、Rif1強発現による増殖阻害を抑圧する変異のスクリーニングおよび、その変異遺伝子の同定を進める。 Hsk1機能をバイパスするMrc1及びRif1の点突然変異が得られれば、それらの染色体複製起点の複製活性に及ぼす影響をChIP-chip解析でゲノムワイドに解析する。更に複製活性の異なるいくつかの複製起点の複製活性をrealtime PCRや二次元電気泳動法で個々に解析する。 Rif1強発現による増幅阻害を抑圧する遺伝子が同定できれば、その蛋白質のRif1結合能、Rif1との核内共局在の有無を調べ、染色体への結合部位を解析する。また、その遺伝子の変異株での染色体複製起点の複製活性を解析する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
消耗品として、酵母組換え体作製、及びその検出のために、制限酵素、Taq、キット類を購入する。また、DNA複製起点周辺のDNA構造を二次元電気泳動法で解析する際、サザンハイブリダイゼーションを行うが、その検出用プローブ作成のために [α-32P]dCTPを、Hsk1やCds1などのキナーゼ活性を測定するために、[γ-32P]ATPを、アフィニティ精製や間接蛍光抗体法のための抗タグ抗体や蛍光標識2次抗体、ダイナビーズなどを購入する。また、酵母の培養のための培地類、PCR反応のプライマーとして合成DNAを購入する。 成果発表のために、平成25年度は国内学会と海外の学会へ参加するためのそれぞれの旅費に使用する。
|