真核細胞のゲノム上には多数のoriが散在し、実際のDNA複製はその中の一部から開始する。更にゲノム領域によりS期内で複製開始される時期も異なり、S期初期、中期、後期複製領域に区分できる。Cdc7はこの複製開始の部位とタイミングを決める重要な因子と考えられる。 我々はHsk1(分裂酵母のCdc7ホモログ)変異を相補する変異としてMrc1(高等動物Claspinの機能的ホモログ)とRif1を同定し、それらはお互い異なる機構で複製開始部位選択に働くことを示した。本研究ではこれら制御機構の分子メカニズムを解明する目的で解析した。 Mrc1のC末に近い782-879aa配列(HBS)を欠失したMrc1ΔHBS株は、正常なcheckpoint機能を示し、かつhsk1-89変異を部分的に相補する。ΔHBS変異とMrc1のcheckpoint機能に特異的に欠陥を示す3A変異とを同時に持つMrc1変異のhsk1-89変異相補能はそれぞれの単独変異より強く、HBSがcheckpoint非依存的な機能を持つことを示した。H26年度はMrc1がHBSを含むC末領域とHBSよりN末側の領域とで分子内結合を形成しDNA複製開始およびhsk1変異に対する阻害活性を持つ構造となり、HBSを介したHsk1によるN末側領域のりん酸化により、あるいはΔHBS変異により分子内結合が壊れると許容型になることが示唆された。また、質量分析法により、HBS依存的にMrc1と結合する因子も同定した。 Rif1機能に関しては、ChIP-seqにより分裂酵母ゲノム上の結合部位を決定し、それらに共通に見られるコンセンサス配列を同定し、この結合配列が複製タイミングの制御に重要なことを示した。 今後はこの研究課題で得られた結果を更に発展させ、Mrc1とRif1による複製開始調節の分子機構をより詳細に解明する予定である。
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