研究課題/領域番号 |
24570206
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大林 典彦 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (40421979)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | Rab / メラノサイト |
研究概要 |
低分子量Gタンパク質Rabは真核生物に普遍的に保存された膜輸送(メンブレントラフィック)の制御因子であ。GEFにより活性化されたRabタンパク質は、エフェクター分子と相互作用することにより膜輸送を制御している。本研究では、メラニン合成酵素の膜輸送を正しく制御することで知られるRab32/Rab38とVarp(我々が新規に同定したRab32/Rab38エフェクター分子)にまず着目し、メラノソーム形成・成熟に関する詳細なメカニズム解明を第一の目的とした。Rab32/Rab38-Varp複合体のいずれかのコンポーネントを1つでも欠損させると、すでに明らかにしていたTyrp1輸送だけでなく、TyrosinaseやDCTといった三つすべてのメラニン合成酵素輸送に異常を来した。 次にVarpの別の機能、すなわちRab21活性化能の色素細胞における生理機能の解明を第二の目的とした。すでにVarp欠損色素細胞において、フォルスコリン刺激によるデンドライト伸長が抑制されること、一方でVarpやRab21を過剰に発現させると、色素細胞のデンドライト伸長が亢進することを見出していた。そこで本年では、Rab21とVarpのヒエラルキーを明らかにすることを目的とした。活性化型Rab21をVarp欠損色素細胞に発現させたところ、デンドライトの伸長がレスキューされることを見出した。さらに、VarpのRab21活性化ドメインに点変異を導入した変異型VarpをVarp欠損色素細胞に発現させたところ、デンドライト伸長をレスキューできなかった。これらの結果は、VarpによるRab21の活性化が色素細胞のデンドライト伸長に必要であることが強く示唆するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Varp欠損色素細胞においてTyrp1輸送に異常を認めることはすでに見出していたが、さらにTyrosinaseやDCTといった他のメラニン合成酵素の正しい膜輸送にもVarpが必要であるとの新しい知見が得られた。 また、Varpのデンドライト伸長における生理機能については、当初の予定通りに進展している。Varp欠損色素細胞に活性化型Rab21を発現させたときに、Varp欠損によるデンドライト伸長の抑制がレスキューされたこと、そして、VarpのRab21活性化能欠損変異体を用いた解析から、VarpによるRab21の活性化が確かに色素細胞のデンドライト伸長に必須であることを明らかにすることができており、研究目的は順調に達成している。
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今後の研究の推進方策 |
Tyrp1、Tyrosinase、DCTといったすべてのメラニン合成酵素の輸送にVarpが必要であることを明らかにすることができた。今後はVarp欠損色素細胞において、メラニン合成酵素の消失過程についての研究を推進していくことで、不明な点の多いメラノソームの形成・成熟過程を明らかにできるものと期待される。 また、Varpによる色素細胞のデンドライト伸長活性には、Rab21の活性化が必要であることを見出したが、どのようにしてRab21の活性化がデンドライト伸長につながるかは未だ不明である。そこで、蛍光タンパク質タグを施したRab21とVarpを色素細胞に発現させ、これらの分子が陽性である輸送小胞の細胞内ダイナミクスをマルチカラータイムラプス観察により詳細に検討していく。併せて、Rab21やRab32/Rab38の細胞内動態についての研究も同手法により推進することで、VarpによるRab21とRab32/Rab38の使い分けのメカニズムについても解明できるのではないかと期待される。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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