細胞の分裂様式は、細胞のサイズや形状と密接に関係し、また細胞の機能分化には分裂パターンの切替えが伴う。細胞の生存や運命を決定する細胞分裂の位置と方向性、そしてタイミングの制御が、どのような分子機構に基づいて実行されるのか、大変に興味深い。分裂酵母属のS. pombe と S. japonicus は、細胞分裂様式が異なる。両者は同様のゲノム構成のため、わずかな遺伝子機能の差が、分裂様式の差異をもたらすと推察される。本研究では、S. pombe の収縮環形成の時空間的制御に重要な Mid1 に着目し、両種間でその細胞機能の保存性を調べた。これまでの実験結果を整理し、今年度は論文作成を行い、H27年に学術誌に発表できる見込みである。Mid1 の機能解析を進める過程で、S. japonicusのライブ観察し、偽菌糸形成時の細胞質分裂のパターンについて解析を進めている。 一方、昨年度まで効率が悪かったS. japonicusの形質転換については、標準的なエレクトロポレーション法以外に、パーティクルガンや酢酸リチウム法など試みたが、改善には至らなかった。そのため、本研究に従事する学生2名と共に国立遺伝学研究所の仁木研究室を訪問し、指導を受け、ある程度まで効率が改善した。糸状菌や酵母でセプチンと相互作用し、細胞の極性伸長や隔壁分離にはたらくBud4/Mid2 について、S. japonicusのホモログの機能解析を進めることができた。そして、隔壁分離にMid2 が重要なことを明らかにした。Mid2 は偽菌糸形成にも重要なことが期待される。 また、Mid1 と相互作用する Rng2 の機能を追求する過程で、その類似タンパク質Npg1 が胞子形成に大切な役割を担うことを発見し、報告した。さらに、隔壁形成を制御する Rho GTPase の機能について、近畿大学の杉浦教授と論文発表した。
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