研究課題/領域番号 |
24570209
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
中村 信大 東京工業大学, 生命理工学研究科, 准教授 (80361765)
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キーワード | ユビキチン / 小胞体 / 脱ユビキチン化酵素 / タンパク質分解 |
研究概要 |
タンパク質の品質管理は細胞機能の維持に必須なシステムであるが,その作用機序は十分に解明されていない。私たちが見つけた膜貫通型の脱ユビキチン化酵素は,小胞体やミトコンドリアに局在してタンパク質分解に関与する新しい制御因子であることが分かった。本研究では,これらの脱ユビキチン化酵素や新規のユビキチン化酵素の機能解析を行い,オルガネラにおけるタンパク質分解の分子メカニズムと細胞生理的な意義を明らかにして,タンパク質品質管理機構の理解に役立てることを目指すものである。今年度は,私たちが同定した小胞体脱ユビキチン化酵素USP19の機能解析を行い,新たな細胞機能の存在を見出した。これまでUSP19の基質タンパク質として小胞体関連分解の分解基質(CFTRなど)が報告がされていたが,私たちは小胞体関連分解のE3ユビキチン化酵素群も含まれることを明らかにした。USP19がE3酵素であるHRD1やMARCH6と相互作用して,これらの酵素のユビキチン化量を減少させて安定化する役割を持つことを明らかにした。また,USP19の発現抑制をRNA干渉により行うと,MARCH6の発現量が低下し,MARCH6の基質分子の安定化を引き起こすことを見出しており,USP19によるE3酵素の安定化はE3酵素活性を高める方向に働くことも見出した。以上の結果から,USP19は小胞体関連分解のE3酵素の安定化を制御することにより,タンパク質品質管理機構に関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画にあるUSP19による小胞体E3酵素MARCH6の発現調節のメカニズムと小胞体関連分解における意義についてはほぼ計画通り明らかにすることができた。さらにUSP19がMARCH6以外のE3酵素の発現調節を行っていることを見出すなど新たな知見を得ることもできた。現在,これらの研究成果をまとめて論文を投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
計画通り引き続き①小胞体脱ユビキチン化酵素USP19の活性調節機構の解明,②ミトコンドリア脱ユビキチン化酵素の基質同定と生理機能の解明,③新規膜貫通型ユビキチン化酵素RNF186の基質分子の同定と疾患発症メカニズムとの関連の検討を目指して研究を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品など新たに購入するものが少なくて済んだことから,平成25年度で実際に必要とした金額が当初予定額より少なかったため。 消耗品(抗体,合成オリゴ)の購入費,受託解析費用,および投稿論文の掲載費に充てる予定である。
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