タンパク質の品質管理は細胞の生存や機能の維持において重要な役割を果たしていることが知られている。特に、タンパク質合成の場である小胞体ではタンパク質品質管理機構によって構造異常などの異常タンパク質は速やかに排除されている(小胞体関連分解)。しかしながら、その分子基盤や制御機構については十分に解明されていない。私達は、小胞体脱ユビキチン化酵素USP19を同定し、USP19が小胞体関連分解で中心的な役割を果たすE3ユビキチン化酵素群の脱ユビキチン化を介して安定化することを明らかにした。今年度は、このE3酵素の安定化が小胞体関連分解にどのような意義を持つのかを明らかにするために、E3酵素の一つであるMARCH6の機能に焦点を絞って解析を行った。USP19によるMARCH6の安定化は、MARCH6の分解基質である変異体ABCB11のユビキチン化を促進してタンパク質分解を促進すると予想した。実際に、USP19の発現をRNA干渉で抑制するとMARCH6の不安定化が生じて、その結果、変異体ABCB11の発現量が上昇することを確認した。また、USP19を過剰発現すると、MARCH6の安定化が生じ、変異体ABCB11の発現量が低下する結果を得た。以上から、USP19が小胞体E3ユビキチン化酵素の酵素活性をその発現量を調節することで制御して、小胞体関連分解に影響を与えているという新たな分子機構が存在することが考えられる。
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