研究課題/領域番号 |
24570210
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
桑田 啓貴 昭和大学, 歯学部, 教授 (60380523)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | スカベンジャー受容体 / マクロファージ |
研究概要 |
スカベンジャー受容体は高脂血症の原因となる血中余剰脂質のクリアランスに必須である。変性LDL特異的スカベンジャー受容体CD36はマクロファージの細胞表面に発現し、リガンド脂質の取り込みを行う。リガンド結合時のCD36のヘテロ重合体形成のメカニズムは、分子取り込みエンドサイトーシス誘導の解析には欠かせないが、どのような分子とどのような経過を経て重合体を形成しているかについては、ほとんど理解されていない。本年度は、スカベンジャー受容体ヘテロ受容体コンプレックスのリガンドによる蛍光イメージング法の開発に取り組んだ。リガンドとしては、CD36のリガンドであるoxLDLに加えて、CD36とヘテロ重合体を形成すると考えられている自然免疫受容体TLR2のリガンドであるFSL-1を用いた。FSL-1は合成されたリポペプチドであるが、このアミノ酸配列にはリシンが含まれているのでここに蛍光物質を共有結合することで、1分子のFSL-1に1蛍光物質(Atto488, Atto594)を共有結合させた蛍光リガンドを作成した。京都大学物質-細胞統合システム拠点(iCeMS)において1分子イメージング観察のために特別に開発されたTIRF顕微鏡を使用し、CD36およびTLR2を発現した細胞上での1分子イメージングを行ったところ、蛍光標識したFSL-1については、細胞表面の受容体と結合しうることは確認されたが、これまでの予備実験から予想されていた受容体の細胞密度から考えると、結合できる割合が低いと考えられた。このことから、蛍光FSL-1リガンドの結合しやすさは、何らかの理由によりうまく結合できていないのではないかと考えられた。他方、TIRFイメージングを目的とした、ヒト末梢血由来マクロファージの細胞調節プロトコールは順調に進展が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでのところ、リガンドの蛍光標識をおこなったが、リガンド-受容体コンプレックス形成の効率が思わしくない。この理由としては、複数の理由が考えられる。一つは、蛍光物質の共有結合により、リガンド自体の疎水性が変化し、受容体との結合しやすさが変化したのではないかと考えられる。CD36は特に疎水性の高いリガンドを好む傾向があるので、このことは事前に予想されていた。次年度以降に、リガンドの疎水性親水性の点を含めてリガンド作成方法の改良に取り組みたい。一方、スカベンジャー受容体を発現している細胞として、本研究課題では、マクロファージを用いている。マクロファージはこれまでの私の研究でも常に用いられてきた実験材料であるが、Apical側の形態が複雑で1分子イメージングを行うのに効率が良くなかった、そこで、TIRF顕微鏡を用いて、マクロファージのガラス接着面の細胞膜上の受容体のイメージングを行うことにした。ヒト末梢血より回収したモノサイトをM-CSFで培養し、マクロファージを得た。このマクロファージはガラス表面に広く接着し、1分子イメージング観察のために十分な広さの接着面積を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、リガンド標識方法の改善を考えている。FSL-1のペプチド部分のアミノ酸配列を入れ替えることで、リガンド全体の疎水性を変化させたバリエーションをいくつか作成し、蛍光ラベルすることで受容体結合が最適化されたリガンドの作成を考えている。過去にも同様の手法でリガンドの疎水性を調整した文献があるので、参考にする。また、別の手段として、リガンドではなく、抗体をラベルする方法も考慮している。CD36およびTLR2のモノクローナル抗体の蛍光標識による受容体の可視化にも取り組む予定である。その場合、Full Lengthの抗体には2つの結合サイトが存在するため、一分子イメージングの用途に適していない。そこで、パパインなどの酵素を用いてFab部分を切断し、精製することで1価の抗体を制作し、蛍光標識抗体を作成する予定である。これにより、細胞表面のスカベンジャー受容体と自然免疫受容体などを蛍光標識し、ヘテロ重合体の形成メカニズムに取り組みたいと考えている。 FSL-1の蛍光標識方法を改良する必要があるのではないかと考えられた。
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次年度の研究費の使用計画 |
Fab抗体の作成のためにmonoclonal 抗体精製キットを購入する。また精製した抗体を蛍光標識するための試薬キットも購入する。その他の項目として、最近の研究成果より、ヒトマクロファージの新しいサブタイプが次々と明らかになってきている。例としては、Trib1の発現により誘導されると考えられている組織マクロファージなどがあげられる。これらの新しいマクロファージをマウスやヒトなどから選択的に分取し、CD36などのスカベンジャー受容体の発現を調べたいと考えている。これにより、異なったサブタイプのマクロファージでのヘテロ重合体の構成分子の違いを調べるなどして、細胞の機能違いを説明できるのではないかと考えている。また、ヒト以外の動物種としてマウスの骨髄から採取したマクロファージを使用し、同様の解析が出来ないかについても検討する。これにより、上記にあるようなTrib1やその他にマクロファージの機能に重要であると考えれられているjmjd3やIRF4などの特異的遺伝子を欠失したマクロファージ細胞での1分子イメージングを行い、ヘテロダイマー形成の分子メカニズムを解析することが出来ると考えられる。加えてこれらのノックアウトマウスを用いて感染実験などを行い、in vitroおよびin vivoでのこれらの機能解析を含めて解析ができるのではないかと考えている。
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