研究課題
基盤研究(C)
HB-EGFはEGFファミリーに属する増殖因子で膜結合型蛋白として合成され、細胞表面において種々の刺激によって酵素的切断(エクトドメイン・シェディング)を受け、その細胞外領域が分泌される。HB-EGFのシェディングを担う酵素としてADAM17/TACEが知られている。しかしADAM17によるHB-EGF切断の制御機構は未だ不明である。そこで本研究ではこの制御の分子機構を明らかにすることを目的とする。研究計画当初、用いる細胞系として一般的な種々の株化細胞を予定していた。しかし生体内においてADAM17やHB-EGFが実際に機能していることがわかっている細胞系を用いる方が本当の制御機構にアプローチできると考え、用いる細胞系をマウス胎仔心臓弁初代培養細胞に変更した。これはマウス心臓弁の発生過程においてADAM17による切断がHB-EGFの生理機能発揮にとって必須であることが各種ノックアウトマウスの解析からわかっているからである。しかしこの初代培養系では遺伝子導入の系が未だ確立されておらず、今年度この確立から研究をスタートした。そこでリポフェクション法やエレクトロポーレーション法などを含めた種々の導入系の検討を重ねた結果、高濃縮レンチウイルスベクター感染法が最適であることがわかった。またこれと並行して、この培養系においてHB-EGFのシェディングに影響を与える細胞内シグナルについて各種シグナル分子の阻害剤を用いた検討によって、p38MAPKあるいはJNKの阻害がHB-EGFの生理活性(弁間質細胞の増殖抑制)を阻害することや、MEK阻害がHB-EGF欠失細胞の過増殖を抑制することを見いだした。これらのHB-EGFのシェディング制御における重要性は知られており、本細胞系でもADAM17の活性化にこれらが関与している可能性があり、今後確立した変異遺伝子導入法等によりさらに検討する。
3: やや遅れている
実験に用いる細胞系の、一般的な株細胞系からマウス胎仔心臓弁初代培養細胞系への変更に伴い、研究手法の比重が生化学的手法から分子生物学的手法に移り、そのための遺伝子導入法の確立から本研究をスタートしたために、研究進捗の遅延が生じた。しかし、この変更は実際の生体内でのADAM17によるHB-EGF切断制御機構の真実を解明するためには欠かせない変更であり、またこの変更に伴う実験手技的問題の解決にも成功している
使用細胞系の変更によって研究進捗の遅延を生じはしたが、この変更は実際の生体内でのADAM17によるHB-EGF切断制御機構の真実を解明するためには欠かせない変更であり、また幸い本年度内の遺伝子導入法の確立にも成功したので、今後はこの方法による種々の変異遺伝子導入等の分子生物学的手法を駆使した解析によって研究目的を完遂させる。
実験に用いる細胞系の変更に伴い方法論的検討から本研究をスタートしたために、結果として当初予定していた見込額よりも執行額がかなり少額になったが、基本的な研究計画に変更はなく、前年度の研究費を含め、当初予定通りの計画を進めていく。
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) 図書 (1件) 備考 (1件)
Hepatology Research
巻: 43 ページ: 384-393
10.1111/j.1872-034X.2012.01074.x
http://cell-biology.biken.osaka-u.ac.jp/MekadaLabHP/Iwamoto/Iwamoto.html