研究課題
基盤研究(C)
エンドサイトーシスは細胞膜受容体、チャネル、トランスポーターなどの膜貫通型蛋白質の機能制御と品質管理、細胞外環境からの栄養物質の取り込み、神経伝達物質やホルモンの分泌に伴う細胞内膜小胞の補充など、多彩な生理現象に関与する。また、ウイルスやバクテリアなどの感染現象は、これらの病原体が宿主細胞に備わるエンドサイトーシス機構を巧妙にハイジャックする過程に他ならない。本研究の目的は、細胞増殖、免疫機構、細胞極性の形成など多様な生命現象において重要な役割を担うエンドサイトーシスの制御機構を分子レベルで明らかにすることである。この過程において最も重要かつ未解明の課題は、細胞膜を細胞質側に引き込み、湾曲させ、引き伸ばし、縊り取る、という非常にダイナミックな生体膜の変形機構の実体である。近年、このミッシングリンクを結ぶ因子として「生体膜の変形活性」を有する蛋白質群が見出され、エンドサイトーシスにおける重要性が多くの注目を集めている。本研究では、我々が近年見出した新規生体膜結合モジュール「SYLFドメイン」を有するタンパク質SH3YL1に着目して、エンドサイトーシスにおける細胞膜の形態変化を誘導するメカニズムを明らかにする。今年度は、蛍光顕微鏡下におけるリポソームの動態観察系を用いて、SYLFドメインの生体膜形状制御活性を詳細に解析した。その結果、SYLFドメインのアミノ末端に存在する両親媒性αヘリックス構造が生体膜への結合だけでなく、形状制御活性にも必須であることが明らかとなった。また、RNA干渉法を用いた細胞レベルでの解析により、SH3YL1が増殖因子受容体の細胞内取り込み後の輸送過程に関与することを示唆する成果を得た。
2: おおむね順調に進展している
今年度の研究計画は概ね順調に進行することが出来た。特にRNA干渉によるSH3YL1の機能阻害実験においては、エンドサイトーシス後のオルガネラに著名な変化が観察されており、次年度以降の展開につながる重要な知見を得る事ができたと評価している。また留意点としては、SH3YL1の蛍光標識を施したリコンビナントタンパク質の調製が難航しており、in vitroにおける生体膜変形アッセイにおいて本タンパク質の作用点を可視化できていないことが挙げられる。
前年度の成果をもとに一層の推進を予定している。留意点として明らかとなったSH3YL1の蛍光標識リコンビナントタンパク質の調製については、バクテリアでのタンパク質発現系だけでなく、哺乳類細胞(浮遊型293細胞)を用いた発現系を検討する。さらに、細胞内小胞輸送経路におけるSH3YL1の作用点についても、種々のマーカータンパク質との共免疫染色や相互作用解析などを駆使して明らかにすることを目指す。
該当なし
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