研究課題/領域番号 |
24570219
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
中村 太郎 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (30291082)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 膜輸送 / シンタキシン / アレスチン / 酵母 |
研究実績の概要 |
分裂酵母の胞子形成は、減数分裂と同調し、細胞内に新たに細胞を形成する興味深い現象である。このとき、細胞膜のシンタキシン1オルソログであるPsy1は細胞内にとりこまれ、胞子の細胞膜へと移行する。シンタキシン1は膜小胞の受け取りに関わるタンパク質なので、結果的にこの移行が膜小胞輸送の方向をダイナミックに変化させると考えられる。しかしながら、どのようなタンパク質がPsy1を特異的に認識し、とりこむかについては不明である。申請者らが取得したMug170はアレスチン様の構造を有しており、Psy1のとりこみに重要なはたらきをすると予想される。本研究はMug170がいかにPsy1を認識し、減数分裂特異的なPsy1のエンドサイトーシスを引き起こすか、その分子メカニズムを明らかにすることを目的とする。細胞膜のタンパク質のとりこみはユビキチン化がその引き金となることが知られている。ユビキチンは標的タンパク質のリジン残基に付加される。Psy1に12カ所存在するリジンをアルギニンに置換したさまざまな変異株を作製し、減数分裂・胞子形成時のそのとりこみについて調べた。すべてのリジン残基について調べた結果、とりこみに重要なリジン残基を決定した。 また、Psy1の取り込みに関わる新たな遺伝子を取得するために、減数分裂・胞子形成時に発現が上昇するmug遺伝子に注目し、その破壊株における減数分裂・胞子形成時のPsy1のとりこみを観察した。約200のmug遺伝子破壊株を調べたところ、20株についてとりこみに異常が見られた。この中には表層でアンカーとしてはたらくタンパク質、膜貫通領域をもつタンパク質3つ、ユビキチンリガーゼ、サイクリンをコードする遺伝子が含まれていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Psy1分子におけるユビキチン化されると予想されるリジン残基を決定した。また、Psy1のとりこみに関する遺伝子として約20の遺伝子を取得した。この中には、ユビキチンリガーゼ、表層でアンカーとしてはたらくタンパク質、膜貫通領域をもつタンパク質、サイクリンをコードするものなどが含まれ、興味深い遺伝子を数多く取得することができた。これにより、Psy1が減数分裂・胞子形成時に発現する一連の遺伝子により、認識され、ユビキチン化され、とりこまれる基本的な分子モデルが明らかになった。しかしながら、今回取得した遺伝子が、具体的にどのようにPsy1のとりこみに関わっているかは現時点では不明なので、それらを明らかにしていくことが今後の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
取得したMug遺伝子がどのようにPsy1のとりこみを制御するか、より詳細な解析が必要と思われる。出芽酵母ではアレスチンが標的タンパク質のユビキチン化を引き起こすので、今回ユビキチンリガーゼが取得されたことはそれを示唆する結果である。実際にMug170と取得したユビキチンリガーゼが結合するのか、このユビキチンリガーゼで実際にPsy1がユビキチン化をうけるのかなどを生化学的に明らかにしていきたい。また、表層のアンカータンパク質はユビキチン化後のPsy1を細胞内にとりこむ際に細胞膜上ではたらくと考えられる。このタンパク質は微小管依存的に機能していることがわかっているので、Psy1のとりこみと微小管との関係についても調べていきたい。また、サイクリンをコードする遺伝子も取得されている。したがって、CDKによるPsy1のとりこみの制御機構の存在も示唆されているので、このキナーゼ複合体が何をターゲットとし、Psy1のとりこみを制御しているかを明らかにしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
Mug170がどのようにシンタキシンをとりこむかの基本的なメカニズムを明らかにし、論文発表する予定であったが、最近Mug170以外にもシンタキシンのとりこみに関わる因子を複数取得することができたため、研究計画を変更し、これらのタンパク質どうしがどのように関わるかを調べる必要が出たため、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
新しく取得した因子の解析とその結果の学会での発表、論文投稿等を今年度におこなうこととし、未使用額はその経費にあてたい。
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