研究課題/領域番号 |
24570222
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
森島 信裕 独立行政法人理化学研究所, 小林脂質生物学研究室, 専任研究員 (40182232)
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キーワード | 細胞分化 / 細胞死 / アポトーシス / カスパーゼ / 小胞体ストレス / 筋分化 |
研究概要 |
1.ATF6の特異的な活性化機構の解析 GFPタグを付けたATF6蛋白質を筋芽細胞中で発現させ、抗GFP抗体を用いた免疫共沈降を行って回収する条件を確立した。増殖条件下にある筋芽細胞から得られた沈降蛋白質を電気泳動で分離し、質量分析による解析を行ったところ、ATF6、GFP、抗体以外の蛋白質として同定されたものは分子シャペロンやリボソーム蛋白質など、免疫共沈降実験においてバックグラウンドとなる蛋白質のみであった。一方、ATF6の特異的な活性化が起こる分化誘導条件下ではGFP-ATF6蛋白質のレベルが著しく低下することが判明した。前年度に小胞体ストレスに関わる蛋白質に関して得た知見と同様に、ATF6がユビキチンプロテアソーム系による量的制御を受けている可能性が示唆された。 2.カスパーゼ12基質 放射性同位体アミノ酸を用いてin vitro合成した蛋白質のプールに対してカスパーゼ12による切断スクリーニングを行い、14種の基質候補を見出した。基質候補をコードするcDNAクローンを単離し、配列解析を行った。候補のうち、クローン18D4のみがN末端側に膜貫通領を持つ機能未知蛋白質をコードすることが判明した。カスパーゼ12が小胞体上で活性化されることを考慮し、小胞体に局在する可能性のある18D4に注目してさらに解析を進めた。18D4蛋白質とGFPとの融合蛋白質を筋芽細胞中で発現させると小胞体に局在し、蛍光顕微鏡下で網状のパターンを示した。18D4蛋白質は分子量約4万であり、カスパーゼ12によって試験管内切断を行うと少なくとも2カ所で切断された。筋芽細胞に小胞体ストレスを人為的に起こさせたり、あるいは筋分化誘導条件下において生理的な小胞体ストレスを起こさせたときに18D4蛋白質が切断されるかという点についての解析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
カスパーゼ12の基質候補として解析している新規蛋白質が筋芽細胞中でカスパーゼによる切断を受けるかという課題に取り組むため、蛋白質タグを付与した18D4蛋白質を筋芽細胞中で発現させてから小胞体ストレスを起こさせるという実験を行ってきた。タグ付き18D4蛋白質がこの条件下で切断されることが判明したが、切断箇所の特定に至っていない。その理由は、タグの位置(N末端、C末端、内部)やタグの種類(Myc, HA、His、VSVGなど)によって切断パターンが大きく異なる場合があったためである。これを解決するため、18D4に対するペプチド抗体を作製して内在性の18D4を検出することを計画したが、ウエスタンブロット解析に適した抗体を取得するまでに13種類の抗体作製を行う必要があった。
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今後の研究の推進方策 |
1. ATF6の特異的な活性化機構: ATF6と共沈降する分子の探索を継続する。プロテアソーム阻害剤などを使用し、ATF6の安定性を維持する工夫を行う。 2. カスパーゼ12による基質切断の役割:筋分化過程で基質候補が示す挙動を、新たに作製した抗体を用いて解析する。基質候補の切断が細胞内で起こっていることを確認し、基質が切断されたことによって機能が喪失するのか、または機能を獲得するかを明らかにする。また、siRNAなどによる遺伝子ノックダウンまたは遺伝子編集によるノックアウトを行って基質候補が筋分化過程で重要な役割を果たしているかを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画に比べてやや遅れが生じたため、カスパーゼ12の基質に関する機能解析を次年度に集中して行うことになった。 H26年度中に、予定より遅れている機能解析を十分行い、また、遺伝子ノックダウン、ノックアウト実験を同時に平行して進めることで計画のスムーズな進展を図る。
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