研究課題/領域番号 |
24570225
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究 |
研究代表者 |
野口 立彦 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 医学教育部医学科進学課程, 助教 (30443005)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 細胞構造・機能 / 受精 / 微小管 / オルガネラ |
研究概要 |
1)研究体制の確立:本年度は研究室の基本設備、消耗品等の準備や、遺伝子組み換え体を扱うための隔離部屋の構築、ショウジョウバエの飼育環境の整備など、今後の研究実施に向けた準備をまず最初に行った。一部まだ必要な部分もあるが、基本的な実験が行える環境が整いつつある。遺伝子組み換え技術はショウジョウバエの分子遺伝学を遂行する上では必須であり、所属機関での遺伝子組み換え技術の使用許可が24年度10月から可能となった。 2)精子基本形成のメカニズム:先体・核・basal body・ミトコンドリアの位置(精子基本形)決定のメカニ ズムを明らかにするために、各オルガネラのGFPマーカー遺伝子を精巣で発現するショウジョウバエの系統を作成中である。ミトコンドリアと核、basal bodyについては、初代培養の精子形成過程での各オルガネラの動態、微小管動態の概要の記述を進めている。また初代培養した精子細胞の細胞形態変化に対する各種薬剤の効果も検討中である。 3)精子形態形成の分子基盤の解明:正常な精細胞ではBasal bodyから伸長した微小管が精子核を取り囲み、Lis1・ダイニンを介して精子核を結合する。Basal bodyから伸びる微小管のチューブリンGFPを用いたFRAP解析では、微小管は非常にダイナミックであることがわかった。一方、核を伸長させる非常に安定な微小管束が存在することも判明した。核が伸長しないhallley変異体では、核伸長の微小管束ができないことに加え、減数第2分裂が起こらないことが判明した。現在はその理由を検討中である。 4)2つの総説を発表した他、現在精子培養系に関する論文を投稿準備中。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
24年度は多くの時間を研究体制の確立に費やしてしまい、実際に研究を遂行する時間が少なくなってしまったことから研究計画全体としてはやや遅れ気味であることを認めざるを得ない。しかし、助成金のおかげで基本的な研究体制を整えることができ、ショウジョウバエの遺伝学も順調に進み始めた。また精子核周囲の微小管の働きについての研究は一定の進展があり、今後の興味深い展開が期待される。遺伝学と初代培養を用いて、精子のオルガネラの経時変化を追う研究は他の実験系ではできないことから、これまでに解明されていないことが多く存在するテーマである。現在進めている研究も日々新しい発見に接することができやりがいを感じつつ研究している。今後の2年間で初年度の遅れを取り戻すために一層努力し研究に邁進していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
1)精子基本形形成のメカニズム:減数分裂直後に通常サイズのミトコンドリアが鞭毛軸糸の根元に集合し、大型のミトコンドリアが形成される。この過程で働く細胞質微小管の極性と動態の解析をGFP-チューブリンとMito-RFPを用いてライブ観察し解析する。またこのときに働くキネシンモーターやキネシン様タンパク質の働きについても解析する。 2)上記と類似の実験を先体の形成についても行う。 3)精子形態形成の分子基盤の解明:精子核変形の仕組み:halley変異体をはじめとする複数の変異体は精子核が球形のまま変形しないという表現型をしめす。変異体作成の際に挿入されたp-elementの染色体上の位置を検索し原因遺 伝子を同定し、basal bodyとは独立に核膜表面に出現する微小管の形成機構に関連する因子を明らかにする。halley変異体に観られる第2減数分裂の異常の原因を突き止める。このときなぜ第1減数分裂は正常に進むのかについても検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
1)研究体制の確立については、今後さらに初代培養した細胞の細胞生物学的解析を最大限生かすためにマイクロチャンバーやマイクロマニピュレーター等の設備を拡充していく必要がある。精子形成を経時蛍光観察する間に局所的に外力をかける実験、薬剤のパルス処理や局所的処理などを計画している。 2)ショウジョウバエの飼育管理費用と、複数のショウジョウバエリソースセンターから必要な系統を取り寄せる費用。各種消耗品や分子生物学用の試薬の購入 3)学会発表や論文投稿の費用
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