研究課題/領域番号 |
24570225
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究 |
研究代表者 |
野口 立彦 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 医学教育部進学課程, 助教 (30443005)
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キーワード | 細胞構造・機能 / 受精 / 微小管 / オルガネラ / 精子形成 |
研究概要 |
1)研究体制の確立 本年度は研究室内の必要な設備や必要消耗品や試薬の購入などを進めて研究体制が整った状況である。 2)精子形態形成の分子基盤の解明。 昨年度までの研究:減数分裂後の精子核は丸形から精子特有の細長い形に変形する。この変形には核周辺の特殊な微小管が関わっている。精子核はbasal bodyと呼ばれる構造を介して鞭毛軸糸と結合している。basal bodyは中心体が変形したもので鞭毛軸糸の鋳型となると同時にその周囲に微小管を生やす能力を持つ。このbasal body由来の微小管はLis1やダイニンを介して減数分裂後の早い時期に精子核を取り囲み二つの構造を連結する。しかし、これとは独立した非常に安定な微小管が精子核膜の周囲に出現し、精子核を伸長させることが判明した。 本年度の研究:核の伸長が起こらず、丸形のままにとどまるhalley変異体について詳しい解析を行った。halley変異体では核伸長のための微小管が周囲に現れない。また野生型では精子核は精子頭部に局在するが、halley変異体の核は局在異常となる。野生型では減数分裂前に16個の一次精母細胞が一つの細胞塊としてシスト内に存在し、これが減数分裂を経て64個の精細胞となり精子への細胞変形が開始される。ところが、halley変異体の場合、16個の一次精母細胞から32個の精細胞になり減数第2分裂が起こらないことが判明した。しかし、減数分裂を完了しないにもかかわらず精細胞としての分化は開始され、鞭毛軸糸が伸長する。電子顕微鏡による解析では、鞭毛軸糸は形成されるものの多くは途中でバラバラに崩壊してしまう。これはおそらく、減数分裂の異常によって、細胞内の各構造の配置などが完全に精子を作る態勢になっていないまま分化過程の一部だけが進行しようとするからであると予想される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度はhalley変異体の解析にとどまってしまったことは大変残念に思う。今後halley遺伝子の同定やその機能解析など課題は多く残っている状態である。 遅れの理由としては、1)今年度はまだ研究体制の確立に多くの時間を費やしてしまったこと、まだ多くの実験器具や手法を機能させるのに時間を取られてしまっている。2)他の業務により研究にかける時間が確保しずらかったことが挙げられる。3)研究を全て一人で遂行するために、立ち上げからハエの維持管理に至るまでどうしても時間がかかってしまっている。 26年度では研究のための時間をより多く確保して遅れを挽回し、論文の形にできるよう研究に邁進したい。
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今後の研究の推進方策 |
1)halley変異体の表現型を更に詳しく検証する。一次精母細胞の初代培養を用いて、変異体の減数分裂をライブ観察し、減数分裂のどこが異常になっているのかを詳しく解析する。この場合、GFP-チューブリンで紡錘体を、RFP-ヒストンで染色体をラベルし、またγチューブリン-GFPで中心体の挙動も可視化して、減数分裂での各構造を追跡する。 2)halley遺伝子の同定と機能解析。変異体作成の際に挿入されたp-elementの染色体上の位置を検索し原因遺伝子を同定する。ヒトや他の高等動物のホモログがあるかどうかを検討する。halley原因遺伝子をクローニングした上で、halleyタンパク質の機能を検討する。抗体を作成し蛍光抗体法を試み細胞内の局在を決定し、GFP-halleyを発現させて精子に分化する細胞内での局在変化をライブ観察する。 3)halleyと類似の表現型を表すdouble faultについても同様の解析を試み、halleyとの機能的な関わりについても検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
論文出版費用と、実験に必要なショウジョウバエ系統のストックセンターからの入手に300000円を見込んでいたが、この内、研究成果を論文発表することができなかったためにその費用は繰り越しとなった。また学会参加旅費のために200000円使用する計画であったが、海外の学会参加がなくなり、国内研究会と研究打ち合わせの参加費用にとどまったため次年度への繰り越しとなった。 繰り越しとなった使用額は、使用目的は変更せず論文出版費用と学会参加のための旅費として使用する予定である。 本来の次年度請求分は、必要備品の購入やショウジョウバエの管理費等に当てられる予定である。
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