研究課題/領域番号 |
24570228
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
若松 義雄 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60311560)
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研究分担者 |
鈴木 久仁博 日本大学, 歯学部, 教授 (30256903)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 神経堤 / 進化 / 発生 / ヘテロクロニー / 有袋類 / 哺乳類 / 鳥類 / Sox9 |
研究概要 |
(1)オポッサムゲノムDNAやcDNAを調整し、PCRによってSox9、Snail1などの神経堤形成関連遺伝子をクローニングした。それらの遺伝子のうち、Sox9、Snail1、Snail2、Msx1、BMP2、BMP4、Pax7の頭部神経堤発生過程における発現をオポッサム9-10日胚について解析し、ニワトリ、マウス胚での発現と比較検討した。その結果、とりわけSox9についてニワトリやマウスと比較して早い発現の開始と顎原基の発生にいたる長期間の発現が観察され、オポッサムにおける頭部神経堤やそれに由来する顎原基の発生の時間的な変更に対するSox9遺伝子の寄与が示唆された。 (2)オポッサム胚の全胚培養条件の検討(酸素分圧、温度、培地と添加物)に取り組み、高酸素分圧(95%)、低温(35℃)の重要性を明らかにした。しかし、明らかな改善がみられたものの、まだ遺伝子導入実験などに使用するには不十分であるため、今後の改良が必要であるという結論に至った。 (3)ニワトリ胚について、stage 5の予定神経堤領域を除去し、stage 8の胚から切り出した神経堤領域を移植することでオポッサム胚における頭部神経堤の発生過程の状況をニワトリ胚で再現することを試みた。しかし、頭部神経堤がより早く、より広く移動するのが観察されたが、顎原基が早く形成されることは無かった。このことから、少なくとも鳥類胚では、顎原基が通常よりも早く形成されるためには別の因子が必要であることが示唆された。すなわち、オポッサムにおいては神経堤形成プログラムが早く動くだけでなく、顎原基発生プラグラムが早く動く可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初本年度に計画していた実験はほぼ予定通りおこなうことができた。とりわけ遺伝子発現解析については順調にすすめることができ、Sox9という頭部神経堤や顎原基の発生に重要な遺伝子について、オポッサムに特有の発現様式があることを発見したのは大きな進展であった。しかし、オポッサムの全胚培養法は遺伝子の解析などに用いるにはまだ不十分であり、実験条件についての今後の検討が必要不可欠である。また、ニワトリ胚での移植実験は手技的に難しかったものの、実験操作そのものはうまくいった。しかし、ニワトリ胚でオポッサムの頭部神経堤発生を再現できなかったことから、来年度以降の打開策を必要とした。
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今後の研究の推進方策 |
(1)オポッサムでの遺伝子機能解析(とりわけSox9遺伝子について)をすすめるために、全胚培養法の確立は必須である。2年目である平成25年度はこの点について、集中的におこなう予定である。 (2)有袋類のゲノム情報はオポッサムに加えてワラビーとタスマニアデビルがアクセス可能となったことから、神経堤発生関連遺伝子の発現制御にかかわるcis制御領域の比較検討がより信頼性の高いものになった。したがって、有胎盤類と有袋類のゲノム配列比較をすすめ、有袋類の頭部神経堤発生に重要なゲノム配列を同定する。 (3)ニワトリ胚を用いた移植実験では、オポッサムの顎原基の発生様式を再現することはできなかった。この点について、移植実験ではなくSox9を含む神経堤発生関連遺伝子の導入をおこなうことを試す。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当無し
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