研究課題/領域番号 |
24570228
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
若松 義雄 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60311560)
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研究分担者 |
鈴木 久仁博 日本大学, 歯学部, 教授 (30256903)
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キーワード | 有袋類 / 神経堤 / エンハンサー / Sox9 / ヘテロクロニー / オポッサム / マウス / ニワトリ |
研究概要 |
(1)前年度までにオポッサム胚の神経堤発生においてSox9遺伝子の発現がマウスやニワトリと比べて早く始まり、かつ長く続くことがわかった。今年度はさらにヤモリ胚を入手してSox9の発現を調べ、ヤモリの神経堤細胞でのSox9の発現はオポッサムよりもニワトリやマウスに近いことが明らかとなった。この結果から、オポッサム胚の神経堤発生におけるSox9の発現パターンが有袋類に特有である可能性が高まった。Sox9を含む神経堤発生関連遺伝子の発現パターンの種間比較について論文としてまとめ、現在リバイス版を再度投稿したところである。 (2)今年度はオポッサム胚を十分な数入手できなかったため、培養条件検討実験はおこなうことができなかった。 (3)Sox9遺伝子の神経堤特異的発現に寄与するエンハンサー配列がマウスで報告されていたため、様々な生物種間でその配列を比較検討した。その結果、オポッサムやワラビー、タスマニアデビルといった有袋類に特有の変異がみつかった。マウスSox9遺伝子の神経堤エンハンサーにEGFPレポーターをつないだプラスミドを構築し、ニワトリ胚に導入したところ、神経堤特異的なEGFPの発現を確認できた。またこのエンハンサーに有袋類に見られる変異を導入したレポーター遺伝子を構築し、ニワトリ胚に導入したところ、EGFPの発現は検出できなくなった。これらのことから、有袋類におけるユニークなSox9遺伝子の発現は、エンハンサー配列の変化とともにそれを活性化するメカニズムの変更があることが示唆された。 (4)ニワトリ胚の外胚葉にSox9を強制発現させたが、顎原基が早く形成されることは無かった。遺伝子導入、発現方法に改良が必要と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝子発現解析をすすめ、その結果を論文にまとめる作業をおこなうことができた。またSox9遺伝子の発現が有袋類で変化していることに関連して、その分子基盤を理解するための端緒となりうる発見、すなわち有袋類特異的なエンハンサー配列の変異を発見し、その変更が意味があることをニワトリ胚への遺伝子導入実験により明らかにすることができたことは、大きな収穫であった。一方で、オポッサム胚の全胚培養系の確立は進んでおらず、最終年度における課題として残った。
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今後の研究の推進方策 |
(1)オポッサム胚の全胚培養系についてこれまで得られた知見をもとに、さらに方法を改良し、遺伝子導入実験ができるようにしたい。 (2)Sox9遺伝子の神経堤特異的エンハンサーにおける有袋類特有の変異は、転写因子であるMybやRORの結合配列を含んでいる。これらの転写因子がこのエンハンサーの活性化にどのように寄与するのか、検討する。そのためにMybの発現ベクターは既に入手している。 (3)ニワトリ胚の外胚葉にSox9発現ベクターを導入しても、顎原基が早くできなかったのは、導入遺伝子の発現を十分に制御できなかったからであると推測した。そこで今年度は、予定神経堤領域に限局したかたちで内在性のSox9よりも早く外来Sox9遺伝子を強制発現させるために、Pax7のエンハンサーにSox9遺伝子をつないだプラスミドを構築し、ニワトリ初期胚に導入し、その表現型を解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
効率良い使用を心がけて計画的に研究を行った結果、種卵や試薬に一部余裕ができたので、購入予定であったものを翌年度に回すことが可能となったため。 平成26年度におこなう予定のニワトリ胚への遺伝子導入実験に使用する、ニワトリ種卵やDNA関連試薬類の購入に充てる。未使用金は平成26年度分とあわせて使用する。
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