研究課題
脳の機能的な神経回路の形成には、基礎的な構造構築に加えて、軸索末端の分岐伸長、過剰突起刈り込み、シナプス形成等を含む様々な最適化の過程が存在する。本研究は、ショウジョウバエをモデルに、脳に於ける機能的な神経回路の成熟と最適化を制御する機構に焦点を当て、標的領域における軸索の微細分岐を制御する遺伝子機構の解析を行う事を目的としている。神経微細構造の形成が異なる遺伝的背景により影響を受けることを排除するために、これまでに遺伝学的スクリーニング使用するすべてのショウジョウバエ系統を野生型の標準系統と戻し交配し、さらに、神経軸索末端の微細分岐構造が変化する系統を探索するために、既知の制御遺伝子の過剰発現により分岐形成を遺伝的に鋭敏化した系統を作成した。これまでに、これらの系統を使用して、様々な変異体について、軸索末端の分岐数や側鎖長が野生型と比べて変化する変異系統を多数同定した。さらに、これらの変異体について、神経筋接合部における軸索末端構造を解析した。同定された候補遺伝子について、シナプス構造の変化を分子レベルで明らかにするために、Active zoneの形成、グルタミン酸受容体の発現、後シナプスタンパクの発現、さらに主要な細胞骨格結合因子に発現等を明らかにした。また、RNAi等による発現抑制により、軸索の微細分岐を制御する遺伝子機構機能解析を行い、シナプス形成変異が確かに当該遺伝子の変異によるものである事を確認した。本研究課題で明らかにした神経回路微細分岐を左右する遺伝子の多くは、ヒトにおいてさまざまな精神疾患に対する遺伝的リスク因子であり、ヒト脳の発生ならびに機能異常の理解にも重要な手がかりとなるものと思われる。
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Scientific Reports
巻: 4 ページ: 4798
10.1038/srep04798
http://www.biol.tsukuba.ac.jp/~tokunaga/welcome.html