研究課題/領域番号 |
24570230
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小嶋 徹也 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (80262153)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 付属肢 / 領域化 / 転写因子 / 発現制御 / 細胞増殖 / 昆虫 |
研究概要 |
真核多細胞生物の組織や器官の発生過程では、組織の成長に伴い、種々の領域特異的転写因子の発現が時々刻々と変化することで、最終的な形態に対応する領域に分割される領域化が重要である。このメカニズムの理解を目標として、ショウジョウバエ成虫肢形成過程、特に付節領域の分節化過程をモデル系として、種々の領域特異的転写因子の発現と機能について詳細な解析を行った。 ショウジョウバエ成虫肢の付節は第1付節~第5付節の5つの分節から構成されるが、発生初期には多くてもBarを発現する領域とDachshund (Dac)を発現する領域の2つの領域にしか分割されておらず、その後の組織の成長に伴い、BarやDacの発現が変化して、最終的にBarが強く発現する領域、弱く発現する領域、BarもDacも発現しない領域、Dacが弱く発現する領域、強く発現する領域の5つに分割される。この過程でのNubbin (Nub)、Rotund (Rn)、Apterous (Ap)という転写因子の発現と機能を解析した結果、1)付節領域の成長に伴い、それまで一様に発現していたNubの発現領域にNubが発現しない領域が生じ、拡大することにより、Nubによって発現が抑制されていたRnの発現領域が生じ、拡大し、RnによってBarの発現が抑制されてBarの発現しない領域が生じ、拡大すること、2)Nubの発現しない領域とRnが発現する領域は終齢幼虫中期以降も拡大し続けるが、終齢幼虫中期になると、将来の第4付節領域でApが発現し始め、ApによってRnによるBarの抑制が抑制されるため、それ以上、Barが発現しない領域は拡大せず、Barを弱く発現する領域が形成されることがわかった。このことから、組織の成長とApの発現時期の制御のバランスが領域化に重要であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、ショウジョウバエ成虫肢形成時の付節領域形成過程における領域特異的転写因子の機能解析と相互発現制御メカニズムの解析を目指し、Bar、Dac、Nub、Ap、Rnなどの転写因子間の発現変化の関係やそこに関わる機能を詳細に明らかにすることを目標としたが、概ねその目標を達成でき、これら転写因子による領域化プロセスの詳細を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度で付節形成に関わる重要と思われる転写因子の機能についてかなりの情報が得られたが、さらにod-skipped familyの4つの転写因子が今回調べた転写因子と密接に関係することを示唆するデータも得たため、これらの機能についてさらに調べて、付節の領域化に関わる転写因子の機能の全貌を明らかにする。また、組織の成長が領域特異的転写因子の発現変化を生じさせる重要な要因となっていることがはっきりとしたので、細胞増殖制御がどのようになっているのかを解析していく。この時、近年特に注目されているHippo経路の関与や制御について注目して解析をする。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の予定よりも順調に研究が進んだことにより、抗体染色やショウジョウバエの形質転換体作成、ショウジョウバエの飼育数を予定よりも抑えることができたため、次年度使用額となった。しかし、転写因子による付節領域の領域化メカニズムの全貌解明のためには、当初予定していなかった新たな転写因子の解析をすることが必要となったため、このための抗体染色やショウジョウバエ形質転換体の作成、ショウジョウバエ飼育などに使用する。
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