研究課題/領域番号 |
24570232
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
黒川 大輔 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (40342779)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 進化発生 / 休眠 |
研究概要 |
東アフリカに生息する一年魚(Nothobranchius korthausae)を用いて、脊椎動物の発生休止現象の分子メカニズムと、その進化過程についての解析を行っている。 平成24年度は以下の解析を行った. 人工的に発生休止状態にした胚と発生が進行している胚のそれぞれから全胚RNAを調整し、次世代シークエンサーによるトランスクリプトーム解析を行った.シークエンスはBGI Japanに外注し、Illumna Hiseq2000を用いて、それぞれのサンプルより約12Gbの塩基配列を得た。 これらの塩基配列情報をアッセンブリしたものを検索用データベースとしてLocal blastを行った所、これまで進化速度が速くて縮重プライマーによるクローニングが難しかった遺伝子mRNAの検索が可能になり、解析に必要な遺伝子の単離の高速化に成功した。 また、発生休止胚と発生が進行している胚のトランスクリプトームを比較し、発生休止胚において発現が上昇する遺伝子を検索したところ、およそ3000種のmRNAが発生休止により発現が約10倍上昇している可能性が示唆された。これらの遺伝子は 1)転写活性を抑制する遺伝子,2)細胞分裂を抑制する遺伝子,3)細胞の物理的強度に関わる細胞表層に発現する遺伝子, 4)ホルモン遺伝子等に大別された。幾つかの遺伝子については定量的RT-PCRやWhole mount in situ hybridization法によっても、実際に休眠胚で強発現している事を確認できた。 また、休眠時の細胞の動きを可視化する為の蛍光タンパク質を発現するトランスジェニック系統の作製も行った.胚全体の細胞でKikGRタンパク質を、中軸中胚葉においてEGFPタンパク質を発現する二種の系統を樹立して、すでに樹立している全細胞核でEGFPを発現する系統と共に系統維持している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【研究実績の概要】に述べた通り、平成24年度に目標とした全胚RNAのトランスクリプトーム解析と、発生休止に関わる候補遺伝子の選抜は終了した。また、発生休止期の細胞の振る舞いを観察するためのトランスジェニック系統も樹立し、概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに選抜した発生休止に関係する候補遺伝子のmRNAや、アンチセンス・モルフォリノオリゴを顕微注入して強制発現や発現抑制を行い、その遺伝子の発生休止における機能を解析する。また、これらの遺伝子をテストケースとして、最近、他の生物種で確立してきたTALENの導入によるゲノム編集技術の一年魚への応用可能性を検討し、可能であれば突然変異体を作製し、遺伝子機能解析を行う。これらの解析で得られた遺伝子について、ゼブラフィッシュやメダカにオーソログが存在している場合,それら休眠しない魚種での機能を同様の方法で比較解析することにより、休眠メカニズムが進化的にどのように獲得されたかを推測する。実験に必要なN.korthausae受精卵への外来遺伝子やmRNA等を導入する条件は、既に確立している。
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次年度の研究費の使用計画 |
交付申請時に請求した研究費計画に基づき、効率的な運用に努める。分子生物学実験に関する費用はエッペンドルフチューブやオートピペット用チップ等のプラスチック製品、および各種酵素等の試薬、拡散抽出用のキット等より算定した.実験動物の飼育維持費については飼料等の価格から算定した.旅費は研究成果発表の為の国内外の学会参加費として算定した。その他、論文投稿に関わる英文校閲費、投稿料等、研究内容を論文として発表する際に必要な費用も計上している。
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