研究課題/領域番号 |
24570232
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
黒川 大輔 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (40342779)
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キーワード | 発生 / 進化 / 休眠 |
研究概要 |
東アフリカに生息する一年魚(Nothobranchius korthausae)を用いて、脊椎動物の発生休止現象の分子メカニズムを解明し、その進化過程を明らかにすることを目標に研究を推進している。平成25年度は以下の解析を行った。 平成24年度に行った人工的に休眠状態にした胚を用いたトランスクリプトーム解析により得られた遺伝子発現プロファイルから、休眠中に高発現している候補遺伝子を選抜し、実際に休眠胚で高発現しているかを定量的RT-PCR法やwhole mount in situ ハイブリダイゼーション法により確認した。 実際に休眠中の胚で高発現していた遺伝子について、それらの休眠に関わる機能を解析する為に機能阻害実験を行った。申請時にはアンチセンス・モルフォリノオリゴの顕微注入による遺伝子機能の阻害を予定していたが、より確実に遺伝子機能の破壊が可能なTALENやCRISPRによるゲノム編集法が、我々が実験に用いている一年魚にも応用可能である事が確認出来たので、これらの方法を用いて休眠に関わる候補遺伝子座に突然変異を導入した系統を樹立した。現在、これらの系統での表現型解析を進めている。 また、平成24年度に樹立した胚全体の細胞もしくは一部の細胞のみにEGFPタンパク質を発現するトランスジェニック系統の魚を用いてライブイメージングを行い、胚発生中の各種の細胞の動きを記録することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【研究実績の概要】に述べた通り、平成25年度に目標とした発生休止に関わる候補遺伝子の機能解析を解析する為の遺伝子突然変異系統の樹立等を行った。また全胚の核でEGFPを発現するトランスジェニック系統を用いてライブイメージングにより発生中の細胞の振る舞いを観察することに成功した。以上より研究は概ね順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
CRISPR、TALENによる遺伝子編集により樹立した突然変異体の表現型解析を引き続き行う。これらの解析で得られた遺伝子機能をメダカやゼブラフィッシュ等の休眠を行わない種における機能と比較し、休眠メカニズムが進化的に如何に獲得されたかを推測する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初アンチセンスオリゴの顕微注入による遺伝子機能の解析を予定していたが、より精度の高い解析が可能なTALEN法を用いたゲノム編集技術が実験対象である一年魚に応用可能であることから、これらの技術による遺伝子突然変異体を作製し遺伝子機能解析を行うこととした。この変更に伴い次年度使用額が生じた。 上記の理由からTALEN法によって作製した遺伝子突然変異体の飼育維持や表現型解析に次年度使用額を使用する。合わせて交付申請時と変更の無い研究については研究費計画に基づき、効率的な運用に努める。 分子生物学実験に関する費用はエッペンドルフチューブやオートピペット用チップ等のプラスチック製品、および各種酵素等の試薬や核酸抽出用のキット等より算出した。実験動物の飼育維持費については飼料等の価格から算定した.旅費は研究成果発表の為の国内外学会参加費として算出した。その他、論文投稿に関わる英文校正、投稿料等、研究内容を論文として発表する際に必要な費用も計上している。
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