申請者は東アフリカに生息する一年魚(Nothobranchius korthausae)を用いて、脊椎動物の発生休止現象の分子メカニズムを解明し、その進化過程を明らかにする事を目標として研究を推進するため、三年間の助成を受けて研究を行った. 本助成期間において、一年魚を人工的に発生休止状態にする条件を決定し、大量の休眠胚を得る方法を確立した.この方法によって得られた発生休止胚および発生中の胚からRNAを得て、次世代シーケンサを用いて、それらのRNAseqを行いトランスクリプトーム解析を行った。得られたそれぞれの遺伝子発現プロファイルから発生休止胚に高発現している候補遺伝子を選抜し、定量的RT-PCR法やWhole mount in situ ハイブリダイゼーション法によりそれらが実際に発生休止胚で高発現している事を確認した. また、胚全体もしくは一部の細胞に緑色蛍光蛋白質を発現するトランスジェニック系統の魚を用いて細胞の挙動のライブイメージングにより記録する事に成功した. これらの結果は国内学会で発表し、現在、論文を作成中である。 本研究によって明らかになった発生休止胚において高発現している遺伝子が実際に発生休止に関わるか解析する為に、一年魚においてTALENヌクレアーゼ CRISPR/CAS9法といったゲノム編集技術の応用法を確立させ、目標遺伝子の突然変異体を作製し、幾つかの遺伝子について系統を確立した.これらの突然変異体の表現型については引き続き解析を続ける予定である。
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