研究課題
基盤研究(C)
本課題では、アフリカツメガエルにおける胚血島および造血の制御機構を理解することを目的として、研究に取り組んできた。第一に、心臓原基に付随して出現する骨髄球の分化制御のしくみを解析した。これまでに、内在性NKx2.5およびGATA4の発現阻害実験から、骨髄球の分化にはこれらの転写因子が必要であることが示されていたが、今年度の実験から、CEBPαとNkx2.5またはGATA4を共注入することにより、未分化中胚葉に、前方骨髄球の分化が強く誘導されることが明らかにされた。このことは、これら複数の転写因子の協調的な働きが骨髄球への分化に必要であることを示している。第二に、ミエロペルオキシダーゼに対する抗体を用いた免疫組織学的な解析により、幼生の中腎原基付近(成体の血球の分化領域)に多数の骨髄球が集積していることが明らかにされた。これは脊椎動物では報告のない現象であり、注目される。これらの細胞の由来については、現在解析中である。第三に、アフリカツメガエルG-CSF(xlG-CSF)の大腸菌発現系およびヒト細胞株発現系を構築した。この組換えG-CSF存在下で造血器官由来の細胞を培養すると、成熟した好中球が出現することを確認した。成体におけるxlG-CSF mRNAの発現は、哺乳類と同様にリポ多糖投与による白血球産生刺激によって上昇したことから、造血発生から成体造血の各時期において、白血球産生に関与していることが示唆された。より正確な解析のために、末梢白血球をマウスに細胞免疫し、白血球を特異的に分別認識するモノクローナル抗体の作出に着手した。第四に、血管形態形成にかかわる新規分泌因子rdd (repeated D domain-like)の胚体内における分布の詳細を調べ、rddが血管内皮細胞の分布と密接に関連していることを確認した。
2: おおむね順調に進展している
トランスジェニック法を用いた骨髄球ラベルのためには、Lurp-1プロモーターでGFPをドライブした個体の子孫を増やす必要がある。最初に作成した個体は不妊であることが判明し、その点で実験の進行が遅れている。それ以外の部分は順調に進んでいる。特に、抗体を用いた骨髄球の検出により、新たな骨髄球の分化場所を同定することができたことは、予想以上の展開をもたらした。またrddタンパク質の胚体内分布は血管形成と関連性が高く、そのしくみを解析することで新たな展開が期待される。全体としては、予定通りに進展していると考える。
胚の心臓原基に付随して現れる第一の骨髄球の分化制御の研究は、ほぼ一段落したため、論文を執筆中である。最初に骨髄球特異的に発現するCEBPαが、どのような制御を受けているのかを解明することが、次の課題である。次年度はまず、CEBPαのエンハンサー領域をX. tropicalisゲノムDNAからクローン化することを目指す。また、新たに発見された中腎原基近傍での骨髄球の由来と分布の推移についても、次年度に結論を出す。その後、それらの分化制御がどのようなシグナル(例えはVEGF、Notch、Hedgehogシグナルなど)に依存しているのかを検証する実験をおこなう予定である。Rddタンパク質の局在についても、まとまった知見が得られ、論文を執筆中である。次年度には、Rddと血管前駆細胞がどのようなしくみで関連しあっているかを明らかにする実験をスタートする。
次年度は、主に、実験に使用する消耗品の調達をおこなう。発生生物学会、動物学会での研究発表を予定しており、旅費の一部に使用する予定である。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 1件)
J. Exp. Biol.
巻: 216 ページ: 901-908
10.1242/jeb.076760
Cell Tissue Res.
巻: in press ページ: in press
in press
Dev. Growth Differ.
巻: 54 ページ: 187-201
10.1111./j.1440-169X.2011.01321.x
巻: 215 ページ: 3087-3095
10.1242/jeb.072488