研究課題
棘皮動物は五放射相称という特異なボディープランをもち、その体制は幼生の成体原基でつくられる。 このボディープランの進化に複数の説が提案されているが、大別すると2つのシナリオに収束する:ヒトデの腕(歩帯)を「体軸」ととらえるか「付属突起」とみなすかである。報告者は直接発生種ヨツアナカシパンを材料として、WMISH法によって世界で初めてhox遺伝子発現の全貌を明らかにした。その発現パターンは、(1)棘皮動物の祖先的な前後軸情報は、腕ではなく(変態後に後体腔にそって時計回りに伸びる)成体の消化管にある一方、(2)放射状に発現するhox遺伝子は軸の役割を失い、棘皮動物あるいはウニの新規構造(棘や歯)のパターン化に転用されたらしいことを示唆する。すなわち、放射状に発現するhox1, hox3, hox5 遺伝子の調節機構の解明が、棘皮動物の進化を解く鍵となると着想した。赤道面で切断した動物半球と植物半球の発生形態と遺伝子発現は、それぞれの自律性と相補性の両面を示す。動物半球の表現型と遺伝子発現は、成体原基において中胚葉から外胚葉に向けて複数のシグナルが放出されることを示唆する:(1)自律的なhox1とhox5の発現を放射化するシグナル、(2)otx発現を誘導するシグナル、 (3)羊膜外胚葉の発生を維持するシグナル、である。一方、植物半球はプルテウス型の幼生へと発生したが、対照のように棘をつくらず、変態しなかった。つまり、外胚葉-中胚葉間の双方向のシグナル伝達が成体原基形成に必須であると考えられる。実際、初期幼生をU0126で処理すると、対照と同様にプルテウスへと発生し、羊膜陥は中胚葉を被った。しかし、hox3発現は、棘原基すべてで抑制され、歯嚢原基での抑制は21時間を境に部分的に解除された。この時間差は、原基でのhox3の発現時期・順序と矛盾しない。したがって、外胚葉シグナルは中胚葉でMAPK径路をへてhox3を活性化すると予想される。
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