研究課題/領域番号 |
24570237
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
佐藤 陽子 山口大学, 獣医学部, 研究員 (50398963)
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研究分担者 |
音井 威重 山口大学, 獣医学部, 教授 (30311814)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 発生・分化 / 精子形成 / 遺伝子量補正 / 非コードRNA |
研究概要 |
雄性生殖細胞特徴的な構造クロマトイド小体は、細胞間橋を通して精子細胞間の移動を行い、またこの構成蛋白には生殖細胞の遺伝子発現に関与するRNA 干渉作用があることから、ゲノム半数化に伴う遺伝子量補正に関与することが推測されている。本研究では、性染色体特異的なマーカー遺伝子の円形精子細胞における遺伝子量補正時期を確定し、細胞間橋を維持して精子形成過程を円形精子の後期まで再現可能な新規in vitro培養系を用いて、クロマトイド小体を物理的または化学的に不活性化することにより、半数体精子細胞の遺伝子量補正におけるクロマトイド小体の必要性を明らかにし、転写物の翻訳制御と遺伝子量補正への関与を検証することを目的とする。はじめにクロマトイド小体が細胞間橋を通じて円形精子細胞間で性染色体特異的なmRNAの運搬と翻訳制御を行うことにより、精子細胞間での遺伝子量補正を成立させると仮説をたてた。そこで、平成24年度はこの仮説を検証するため、まず性染色体特異的なマーカー遺伝子の遺伝子量補正の時期を確定することを目的とし実験を行った。当初の予定では、X-linked GFP(Tg(GFPX)4Nagy/J) 雄マウスの精細胞を利用する予定であったが、動物入手及び飼育の許可等に時間がかかるため、通常のICRマウスを用いてまずマーカー遺伝子(Ubely, Akap4, Utp14b)の円形精子期における発現の検討をRT―PCRにより行った。次に、精細胞と我々が開発したセルトリ細胞株とを共培養し、培養下で異なる発生段階の円形精子を作製し、性染色体上のマーカー遺伝子の発現量変化の解析をqRT-PCRにより行い、遺伝子量補正が起こる時期を検討した。精原細胞からの共培養下では、円形精子細胞の回収率が非常に低いことから、今後の解析を行うためには共培養系の改善が必要でありその上でさらなる解析が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
性染色体特異的なマーカー遺伝子の発現に関しては確認できたが、その時期の確定のためには、培養系の改善が必要だと思われた。我々が開発した共培養系は、精原細胞より円形精子細胞への分化を促進するが、円形精子細胞までの発生率は高率ではない。このことは、細胞のマニュプレーションを用いた次年度以降の解析には問題ないが、平成24年度の性染色体特異的なマーカー遺伝子の発現量解析には、手間取る結果となった。現在、培養条件の改良も含めて再度検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、共培養系の培養条件を改良した上で、遺伝子量補正の時期を確定する。さらに、サイトカラシンB 処理によりクロマトイド小体の移動を止めクロマトイド小体の移動停止が、遺伝子量補正に関与するか検討を行う。次に、サイトカラシンBのクロマトイド小体以外の物質や細胞内小器官の移動抑制による遺伝子量補正への関与を除外するため、X,Y両染色体マーカー遺伝子の遺伝子量補正前に細胞間橋を持つ円形精子細胞のクロマトイド小体を物理的に破壊し遺伝子量補正期まで精細胞を培養し、マーカー遺伝子の発現より遺伝子量補正状態を検討する。本実験により遺伝子量補正がクロマトイド小体にのみに依存するかが明らかとなる。さらに、次にクロマトイド小体構成蛋白に着目し、X-linked GFP マウスの精細胞でこれらの蛋白を破壊するため、GFPと波長が異なり標的蛋白に特異的な色素付加が可能なReASH(Red biarsenical fluorophore)を用いたRALI法の開発を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、X-linked GFP(Tg(GFPX)4Nagy/J) 雄マウスを使用する予定であったが、遺伝子導入動物を購入、飼育にあたり、手続きが大変であり、当初の計画を一部変更し通常のマウスを使用したため、遺伝子導入動物にかかる費用(動物、実験試薬費用など)が平成25年度への繰り越し分となった。さらに、平成25年度からの研究室の顕微鏡装置の変更にともない、フィルターセットを旧顕微鏡装置に購入使用するのは不適当と考え、また、蛍光フィルターセットを使用した細胞マニュプレーション操作は平成25年度から主として必要になってくるため、購入に予定していた予算を平成25年度への繰り越し分とした。他、元々計画していた平成25年度の研究費使用計画については、特に大きな変更はない。
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