研究実績の概要 |
雄性生殖細胞特徴的な構造クロマトイド小体は、細胞間橋を通して精子細胞間の移動を行い、またこの構成蛋白には生殖細胞の遺伝子発現に関与するRNA 干渉作用があることから、ゲノム半数化に伴う遺伝子量補正に関与することが推測されている。 昨年度までに性染色体特異的なマーカー遺伝子(Ubely, Akap4, Utp14b)の円形精子期における発現の検討をRT―PCRにより行い、性染色体上特異的なのマーカー遺伝子の遺伝子量補正の時期を同定した。今年度はクロマトイド小体を化学的に不活性化するため、精細胞と我々が開発したセルトリ細胞株との共培養下で円形精子を作成し、マーカー遺伝子の遺伝子量補正期前にサイトカラシンB処理により、クロマトイド小体の移動を止め、クロマトイド小体の移動停止の遺伝子量補正への関与について検討を行ったが、サイトカラシンの使用が共培養系に影響を与えたため結果が不明瞭であった。物理的な方法でクロマトイド小体の移動を止める方法を現在検討中である。 マウスなど熱ストレスにより精子形成が不全になる哺乳類精巣では、熱ストレスにより円形精子細胞で変化が起こりクロマトイド小体の移動に異常が起こる事が知られている。そこで共同研究者のいるバンコクチュラロンコン大学において、熱ストレス下でも精子形成が正常に起こるゾウの停留精巣サンプルから、精巣組織培養系を用いクロマトイド小体を構成するMIWI, MILIをマーカーとしてクロマトイド小体の動きの解析を行った。結果、熱ストレス下でも正常精子形成を起こすゾウ精巣の円形精子では、熱ストレス下でもクロマトイド小体の動きは熱ストレスによる影響をうけていないことが明らかとなった。今後はこの熱ストレス下という実験条件をいかし、熱ストレスによるクロマトイド小体の動きが遺伝子量補正の段階にも影響を及ぼしているか解析をして行く予定である。
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