ニワトリ初期胚をつかって,BMPシグナル強度をライブで観察できる実験系を確立した.BMPシグナルに応答した遺伝子発現に重要なBRE配列にレポーターとしてエメラルドルシフェラーゼを連結したコンストラクトを作成し,初期胚の胚盤葉上層に導入した.内部標準としてCMVプロモーターの下流にEGFPを繋げたコンストラクトを胚に共導入し,培養後,胚にルシフェリンを添加し,EM CCDカメラでルシフェラーゼ発光およびEGFP蛍光を検出した.また,胚の発光,蛍光は時間を追って何度も測定することができた.さらに,細胞標識を組み合わせて,標的にした細胞におけるBMPシグナル強度を追跡することも可能であることが示された. 肝臓の初期マーカー遺伝子であるHexの発現は発生初期には前腸全体で見られるが,前腸が出来上がるstage 10頃には既に予定肝臓領域に限局する.この機構に,Hexと同様stage 10頃に肝臓領域に発現するApolipoprotein A-I (APOA1)が関わることが示唆された.昨年までに,発生時のAPOA1はHexの発現に必要不可欠であることが解明された.本年度,APOA1はBMPシグナルを正に調節することで,前腸後端でBMPシグナルを強め,Hexの発現を前腸後端に限局することを証明した. BMP応答性のルシフェラーゼレポーターをHeLa細胞に導入し,APOA1によってBMPシグナルの上昇が見られるか,ルシフェラーゼアッセイで解析した.BMPリガンドとAPOA1を同時に強制発現させた細胞では,BMPリガンドのみを発現させた細胞に比べてレポーター活性が約1.5倍上昇した.またAPOA1とレポーターをそれぞれ別の細胞に導入した場合にはBMPシグナルが増強されなかったことから,APOA1の機能は細胞自律的であると考えられる.以上の結果から,APOA1は細胞自律的にBMPシグナルを増強することが分かった.
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