研究実績の概要 |
アフリカツメガエル幼生の尾部再生過程をモデルとして、尾部切断後に迅速に傷口が表皮で被われ、さらに再生が開始するためのメカニズムの解明をめざしている。本年度は以下のような結果が得られた。
1.傷表皮および傷表皮キャップでEGFPを発現するトランスジェニック・アフリカツメガエル(xles1:egfp)を2系統確立し、安定してEGFPを発現する幼生を多量に得ることができるようになった。 2.上記トランスジェニック幼生を用いて、尾部切断後の傷表皮におけるxles1:egfpの発現に影響するシグナルを薬理学的に解析したところ、ROS、 TGF-βおよびpERKシグナルに対する阻害剤で、EGFPの発現上昇が阻害されることがわかった。また、内在xles1の発現および、表皮細胞の移動による傷修復自体にもこれらシグナルが必要であることがわかった。さらに、各シグナルの活性化に対する阻害剤の影響の解析から、pERK、TGF-β、ROSの順に傷表皮におけるシグナルの階層性が存在することもわかった。 3.上記トランスジェニック幼生の尾部切断後、傷口周辺の細胞を解離し、セルソーターにかけることにより、EGFPを発現する傷表皮および傷表皮キャップの細胞を時系列に沿って単離することに成功した。さらにこれら単離した細胞を用いてトランスクリプトーム解析(RNA-seq法)をおこない、網羅的に遺伝子発現変化を解析した結果、5,000以上の遺伝子が、時系列に沿って発現変化することが明らかになった。
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