研究課題
本課題は、動物進化と個体発生の関係性の定式化を目指した研究である。これまで脊椎動物の発生過程と進化の関係に関しては発生砂時計モデルが妥当であることを示してきたが、今回、発生タイムテーブルの遺伝子発現情報による異種間対応付け、そしてボディプラン成立期とされる咽頭胚期に特徴的な遺伝子セットの同定などを目標とした。本課題では、進化的分岐後にゲノムの倍加を起こしたにも関わらず形態的に非常に似た状態を保存しているニシツメガエルとアフリカツメガエルを主な対象として研究を行った。実験としては発生期の全胚由来RNAseqデータによる遺伝子発現量の包括的推定をもとにした。カエル2種の発生段階ごとの遺伝子発現情報を比較解析した結果により、発生段階特異的な遺伝子発現情報を用いた場合、これまでの比較形態学的な発生タイムテーブルの対応付けから予想される発生段階の対応関係が検出できることが判明した。今回の異種間対応関係の検出は、検定できないなどの従来法の弱点を克服するものであり、異種間比較により適した情報であると期待される。進化を通してどのように発生過程が変更されてきたのかを追う上で、有用なツールとなることが期待される。また、脊椎動物分岐から考えると比較的近年に分岐した2種であるが、これら2種においても発生砂時計モデルが予測する通り、器官形成期(ファイロティピック段階)が保存されていることが判明した。脊椎動物全体で保存された胚段階を同定した時期と重なっており、ファイロテイィピック段階が進化的スケールによらない、いわば“しつこい保存”を示すことが明らかとなった。成体となってからの自然選択だけでなく、発生期のなんらかの要因にて、こうした保存が起こっている可能性も考えられる。また、こうした胚段階に保存されている遺伝子セットとして転写因子など遺伝子制御に関与する遺伝子が多い傾向にあることも掴んでいる。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 2件)
Zoological Letters
巻: 1 ページ: 1-16
10.1186/s40851-014-0001-0
Science
巻: 346 ページ: 1-9
10.1126/science.1254449
Development
巻: 141 ページ: 4649-4655
10.1242/dev.107318
Annual Review of Genomics and Human Genetics
巻: 15 ページ: 443-459
10.1146/annurev-genom-091212-153404
Nature Genetics
巻: 46 ページ: 526-526
10.1038/ng.2988