研究課題
基盤研究(C)
神経発生過程では、時空間的に厳密な制御の下で、ステレオタイプな回路パターンが形成される。軸索は、多くの中間標的に出会い、次の進行方向を決定するが、その際、ガイダンス分子に対する反応性をタイミングよく切替える必要がある。その分子基盤は不明のままである。重要な中間標的として知られる正中線を交叉するかどうかは、反発性分子SlitとRobo受容体に依存する。本研究は、正中線を交叉する軸索が、いかにして、正中線でタイミングよくSlit反応性を活性化するのか、その仕組みの解明を目指すものである。申請者がこれまでに得た知見から、Slit反応性の活性化機構の根幹となるのは、ある種の感作型反応である可能性が高い。本研究では、その実体に迫り、シグナル伝達回路を解明する。まず、一度Slitで刺激すると、軸索のSlit反応性が増強されることが明らかとなった。また、通常のリガンド反応とは異なり、Slit刺激により、Robo受容体の分解が抑制されることと、エンドサイトーシス後のリサイクリング経路が活性化されることにより、受容体が安定化されることが判明した。更に、エンドサイトーシスとリサイクリングの両方が、Slit反応、また、Slit自身によるSlit反応性の増強に必要であった。この輸送経路を抑制すると、却ってRobo受容体の軸索レベルとSlit反応性が顕著に低下することから、細胞内と細胞膜を往復するRobo受容体の輸送サイクルがぐるぐる回転することが、Slit-Roboシグナリングに必須であり、何らかの細胞内シグナルを増強すると予想される。その要となる、細胞内シグナル伝達分子の候補を絞り込むことに最近成功した。現在、その生化学的、細胞生物学的機能の解析とin vivoレベルでの検証を行っており、Slit反応性の動的制御の中心部分を解明できると期待する。
2: おおむね順調に進展している
研究計画に記載した、Slitシグナル経路が感作型反応であることの証明、エンドサイトーシス、リサイクリング輸送経路の重要性の解明、エンドサイティックリサイクリングのon/off制御機構の仕組みを、現在、ほぼ解明しつつある状況にあることから、おおむね、当初の予定どおり、研究を進展できたと考える。
平成24年度の研究計画に相当する部分を、現在、論文にまとめている段階にある。非常に意義のある知見を複数得ることができたため、かなり高インパクトの論文に仕上げられそうである。平成25年度上半期は、この論文の完成に集中し、後半期から、平成25年度以降の研究項目、Slit-Robo-srGAPとミオシン系の相互作用の意義、及び新規アンキリンリピートドメイン蛋白質Ankrd50の機能に関する研究を開始したい。
本研究において、研究を円滑に実施するために、実験動物購入費を計上したい。また、消耗品として、分子生物学実験試薬、生化学実験試薬、細胞培養試薬、及び細胞培養器具の購入費を含めたい。加えて、研究補佐員1名分の雇用費を含めたい。
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Developmental Cell
巻: Vol. 25 ページ: 印刷中
10.1016/j.devcel.2013.04.015