研究課題/領域番号 |
24570246
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
渡邉 明彦 山形大学, 理学部, 教授 (30250913)
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研究分担者 |
渡辺 絵理子 山形大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (20337405)
中内 祐二 山形大学, 理学部, 助教 (60250908)
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キーワード | 体内受精 / 精子先体反応 / 精子運動開始 / ジェリー層 / 精子ー卵相互作用 / 両生類 |
研究概要 |
両生類において、体内受精様式は体外受精様式から進化的に確立され、陸上環境への適応に貢献したと考えられる。しかし、この受精様式の進化の中核となった適応的変化の詳細は不明である。私たちは、アカハライモリの卵外被であるジェリー層において、体内受精に適応して特殊化した精子運動開始機構の鍵となるsperm motility-initiating substance (SMIS)をコードするcDNAを単離同定し、両生類種間でSMISが分子的な特徴の変異を伴って保存されていることを見いだした。このことは、SMISを介した精子運動開始機構が受精様式の進化と体内受精の確立に関連して適応的に変化したことを示唆する。本研究では、SMISを介した精子運動開始機構がどのように改変されているのかを理解するために、アカハライモリにおいてSMISが局在し、精子先体反応と連携して体内受精の成立を保証するジェリー層表面の微細構造とSMISの遺伝子構造に焦点をあて、両生類種間での相違を電子顕微鏡学的手法および分子生物学的手法等によって解析する。これまでに、ジェリー層表層の電子顕微鏡解析により、アカハライモリジェリー層の表層に存在し、SMISが局在する顆粒がモリアオガエル、ツメガエルには存在しないことが明らかになった。一方、アカハライモリの近縁種であるシリケンイモリではジェリー層表面に顆粒が観察され、アカハライモリと同様に体内受精を行うイベリアトゲイモリではこれまでのところ顆粒が観察されていない。これらのことから、ジェリー層表層におけるSMISを介した精子運動開始機構は、体内受精様式を行う種の一部において受精に機能していることが示唆される。一方、アカハライモリSMISの遺伝子構造をゲノミックPCRによって解析したところ、mRNAの146番目から267番目の塩基の間に少なくとも2つの長大なイントロンが存在することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定した研究計画のうち、ジェリー層表層の電子顕微鏡観察は計画以上の成果をあげているが、遺伝子構造解析については、当初予想していなかった長大なイントロンの存在が示唆され、塩基配列の解読に多くの時間が必要となっている。また、ジェリー層中のSMISの免疫学的な検出については、アカハライモリを除く多くの種のジェリー層が、極めて吸水性に富み、解析用のサンプル調整が困難を極めている。
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今後の研究の推進方策 |
電子顕微鏡観察は現在観察中のイベリアトゲイモリに加えてさらに複数種について観察を行い、種間に見られるSMISを介した精子運動開始機構の相違の特徴を解明する。遺伝子構造解析については、イントロンの配列決定とともにORFの上流および下流配列に焦点をあてて塩基配列の解読を進めアカハライモリSMIS遺伝子の構造的特徴を解明する。さらに、他種のSMIS遺伝子構造の解析、および輸卵管細胞のRNAseq解析から、SMIS遺伝子の塩基配列を取得し、アカハライモリSMISとの比較解析により分子構造の相違を解明する。
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