研究課題/領域番号 |
24570249
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
渡部 輝明 高知大学, 教育研究部医療学系, 講師 (90325415)
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研究分担者 |
岸野 洋久 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (00141987)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 分子進化 / タンパク質多様化圧 |
研究概要 |
タンパク質上で起きたアミノ酸配列変異にかかる選択圧を、タンパク質上での揺らぎを含めて検出することを目的としている。空間分布モデルで既に開発した選択圧の事前分布を、時空間分布検出へ拡張することが課題である。空間分布モデルと同様に、事前分布はイジング模型を用いて構築する。そこでは変異の浄化をもたらす状態、中立な変異を表す状態と配列の多様化をもたらす状態の3状態を考える。各アミノ酸残基における状態間遷移は、ギブスサンプリングによって実現している。 タンパク質立体構造上での分布の平滑化に加え、系統樹上での時間経過による平滑化も考慮して開発を進めている。インフルエンザウイルスのヘマグルチニンタンパク質では、アミノ酸配列の緩やかな連続変異に伴い、抗原性が階段状に変異していくことが知られている。この抗原性の変異によって分割されるAntigenic Clusterを単位とした時系列構造を導入し、これらクラスター間での平滑化を取り入れた時空間分布モデルを構築した。この時空間分布モデルを実現するため開発したアルゴリズムを検証するため、クラスター間で空間分布が全く同じである(時間的な揺らぎを無視した)場合と、各クラスターにおける空間分布が全く独立である(平滑化を無視した)場合での計算を実施した。 それぞれの場合での計算結果は、空間分布モデルを複数回組み合わせて得られる同じ設定での結果と同一の分布を示し、アルゴリズムの妥当性を部分的に示している。各クラスターを独立に扱った場合では、インフルエンザウイルス(H3N2型)がヒトへの適応を始めた1968年当時と2000年前後で、選択圧の分布に大きな違いがあることが示された。1968年当時では高い多様化圧が広くヘマグルチニンタンパク質上に分布している一方で、2000年前後では緩い多様化圧の分布が観られ、その分布も1968年当時とは異なる領域に観られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度までに選択圧の時空間分布モデルの構築は、その妥当性検証も含めて完了している計画であった。実際には時空間分布モデルの構築はアルゴリズム開発の完了に留まり、妥当性検証までに至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に完了できなかった選択圧の時空間分布モデルの妥当性検証を平成25年度の中盤までに完了する。完成した時空間分布モデルをインフルエンザウイルスのヘマグルチニンタンパク質に適用し、Antigenic Cluster内での選択圧分布と抗原性が変異する際の選択圧分布に如何なる差異が生じていたのか検出することを試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度では計画していた国際学会での発表を実施しなかったため、48万円程度の研究費を未使用なまま残した。平成25年度では国際学会での発表(アメリカ、シカゴ)を予定しており、また時空間分布モデルの妥当性検証について北海道大学の研究者に協力を依頼する予定でいるため、旅費としての使用を見込んでいる。
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