研究課題
基盤研究(C)
深海性二枚貝シロウリガイ類の鰓細胞内には化学合成細菌(以後共生菌と呼ぶ)が共生し卵を介して伝達される。共生菌は細胞内共生によりゲノムが縮小し、その痕跡がゲノム上に見られる。シロウリガイ類は、祖先系は1つで宿主と共生菌から共進化していると考えられているが、宿主側の信頼性の高い系統関係を示すデータはない。共生菌のゲノム縮小の過程を明らかにするためには、宿主の系統関係を明らかにした上で議論することが鍵となる。本研究では、シロウリガイ類のミトコンドリア全配列と共生菌のいくつかの遺伝子配列を決定して、宿主と共生菌の系統関係を明らかにした上で、共生菌のゲノム縮小進化の関係を明らかにすることを目的とする。本研究では、3年間の期間で以下の項目を実施する。1)シロウリガイ類の宿主および共生菌の信頼性の高い系統樹の作成。2)共生菌間でゲノム縮小領域の配列比較解析及び宿主と共生菌の系統関係からゲノム縮小の過程を推定。本年度は、日本や北太平洋に生息する11種のシロウリガイ類の系統関係を明らかにすることにした。11種のシロウリガイの宿主と共生菌の系統樹は2つのクレードを構成する。各クレードに分類されるナギナタシロウリガイ及びシマイシロウリガイの2種のシロウリガイ類のミトコンドリアゲノムの全長をPCR法により2つの断片に分けて増幅し塩基配列を決定した。その結果、ナギナタシロウリガイは全長が約19 kbpであった。一方、シマイシロウリガイは約4 kbpの非翻訳領域を残し、約15 kbpまで決定した。この2種のミトコンドリアゲノムは遺伝子の組成及び配置は一致していた。そこで、残りの9種類のシロウリガイ類について遺伝子配列で共通なプライマーを作成しPCRを行い、ミトコンドリアゲノム配列の一部を解読し、得られた配列を基に系統樹の作成に着手した。また共生菌のいくつかの遺伝子配列の決定と系統樹の作成に着手した。
2: おおむね順調に進展している
シロウリガイの宿主と共生菌の信頼性の高い系統樹の作成に関しては、11種類のシロウリガイを用いて解析している。宿主の系統関係に関してはミトコンドリアゲノムを用いる事とし、2種類のシロウリガイについては、ほぼ全長の配列が得られた。残りの9種類のシロウリガイについては、配列をシーケンスしており、順調に進んでいる。また、共生菌の遺伝子配列決定と系統樹の作成についても着手し順調に進んでいる。
今後は、宿主・共生菌ともに、系統関係を明らかにするための塩基配列決定を進めるとともに、信頼性の高い系統樹の作成を進めてゆく。同時に、共生菌のゲノム縮小領域の配列比較を着手する。
該当なし
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