研究概要 |
深海性二枚貝シロウリガイ類の鰓細胞内には化学合成細菌(以後共生菌と呼ぶ)が共生し卵を介して伝達される。共生菌は細胞内共生によりゲノムが縮小し、その痕跡がゲノム上に見られる。シロウリガイ類は、祖先系は1つで宿主と共生菌から共進化していると考えられているが、宿主側の信頼性の高い系統関係を示すデータはない。共生菌のゲノム縮小の過程を明らかにするためには、宿主の系統関係を明らかにした上で議論することが鍵となる。本研究では、シロウリガイ類のミトコンドリア全配列と共生菌のいくつかの遺伝子配列を決定して、宿主と共生菌の系統関係を明らかにした上で、共生菌のゲノム縮小進化の関係を明らかにすることを目的とする。 今年度は、昨年度から継続している、日本や北太平洋に生息する11種のシロウリガイ類の宿主についてミトコンドリアゲノム配列を基に系統関係を明らかにした。既にミトコンドリアゲノム全長を決定したナギナタシロウリガイ及びシマイシロウリガイ2種の配列から共通のプライマーを作成し、残りの9種のシロウリガイについて、15種類中、11種類の遺伝子配列を決定した。得られた遺伝子配列を連結した配列基に、RAxMLとMrBayesを用いて系統樹を作成した。 共生菌については、8種類(GroEL,GroES,GyrB,16S, 23S, Mfd, UvrD, UvrA)の遺伝子全長配列を決定し、得られた遺伝子配列を連結した配列基に、RAxMLとMrBayesを用いて系統樹を作成した。 その結果、宿主の系統樹と共生菌の信頼性の高い系統樹が作成でき、それらを比較すると、一部の種については、宿主と共生菌の分岐の支持が高く系統関係が共種分化を示す系統樹となった。また、一部の種については、共種分化を示さない結果となった。今後は、これらの情報を基に、共生菌のゲノム縮小について調べる。
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