研究課題
深海性二枚貝シロウリガイ類の鰓細胞内には化学合成細菌(以後共生菌と呼ぶ)が共生し卵を介して伝達される。共生菌は細胞内共生によりゲノムが縮小し、その痕跡がゲノム上に見られる。シロウリガイ類は、祖先系は1つで宿主と共生菌から共進化していると考えられているが、宿主側の信頼性の高い系統関係を示すデータはこれまでになかった。共生菌のゲノム縮小の過程を明らかにするためには、宿主の系統関係を明らかにした上で議論することが鍵となってくる。本研究では、シロウリガイ類のミトコンドリア全配列と共生菌のいくつかの遺伝子配列を決定して、宿主と共生菌の系統関係を明らかにした上で、共生菌のゲノム縮小進化の関係を明らかにすることを目的とする。これまでに11種類のシロウリガイ類の宿主と共生菌それぞれについて、これまでよりも信頼性の高い系統樹を作成することができた。平成26度は、11種類のシロウリガイ類の共生菌のうち、2種は既に全ゲノム解析が決まっているので、残りの9種類の共生菌のゲノム解析を進めるため、次世代シーケンサーを用いたドラフトゲノムシーケンス解析を行った。解析した9種のうち、共生菌の16S系統樹において進化速度が遅いナギナタシロウリガイとナラクシロウリガイ共生菌の全ゲノムシーケンスを決定することができた。その結果、これら2種のシロウリガイの共生菌のゲノムサイズは、それぞれ約1.5Mbpあり、既にゲノム配列の決まっている2種(約1.0Mbp)と比較すると、約1.5倍のサイズであった。しかしながら、遺伝子数は、既報の2種とほぼ同程度であり、残りのゲノム領域には偽遺伝子が確認された。これらの結果は、共生菌の祖先が環境中における自由生活では必要であった機能が、宿主動物の細胞内共生へ移行していく中で、不必要になった機能の遺伝子をまず偽遺伝子化させ、最終的には、偽遺伝子領域を欠失させてゆくことが考えられた。
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