平成26年度は運動鍛錬者と非鍛錬者の局所寒冷暴露時の体温調節反応について比較検討した。被験者は日頃運動を行っている男子学生とほとんど運動を行っていない男子学生であった。実験は室温26℃、湿度50 %RHに設定された人工気象室内で行い、10分間の安静の後、左手中指を5℃の冷水に20分間浸漬、その後、再び10分間の安静を保たせた。皮膚温・血流量・温度感覚・温度快適性を測定した。CIVD諸値から運動鍛練者の方が耐寒性に優れていた。運動鍛錬者の様式別に耐寒性を検討した結果、耐寒性に差は見られなかったが、浸漬部を使う種目は皮膚温が下がっても温度感覚はあまり下がらず、刺激に慣れていると推測された。運動環境においては、より気温の高い環境で活動している人の方が、熱放散を促進するために血管の拡張運動が盛んに行われる。そのため寒冷曝露時に一度収縮した血管を早く拡張させ、耐寒性に優れていることが推測された。 本研究では暑熱寒冷暴露時の体温調節反応パターンから「環境温度変化に対する調節能力」を解析・評価し、快適環境の追求による自然環境への適応能力の低下や猛暑、大きな寒暖差によって引き起こされる「熱中症」、また「冷え性」等の不定愁訴や「生活習慣病」に関連する自律神経失調症予防のための基礎的資料の提供と、 暑熱と寒冷適応との関連、さらには身体運動と調節能との関連性について明らかにすることが目的であった. 各被験者の皮膚温の反応パターンからクラスター分析により分類したところ3種類のパターンに分類され、被験者の属性による分析よりも詳細な個人差の分析が可能であること、さらに温度感覚との関連性から、温度変化に温度変化に対して温度感覚の変化が遅く、冷感覚の感受性に関して劣るということが推察された。今後、温度感覚の反応パターンについてもより詳細に検討することが必要である。
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