研究課題/領域番号 |
24580001
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
犬飼 剛 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (90223239)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | アスコルビン酸 / カブモザイクウイルス / Brassica rapa |
研究概要 |
アスコルビン酸(AsA)には抗ウイルス作用があり、ハクサイではTuMVに対する抵抗性反応時にAsA蓄積量が増加する。この結果はAsAがウイルスに対するファイトアレキシンとして働いている可能性を示唆しているが、植物の細胞中にはAsAの他に酸化型のアスコルビン酸であるDHAも一定量含まれる。ウイルスに対する抵抗性反応時にはDHA蓄積量も増加するため、この物質に抗ウイルス作用があるかどうか調べたところ、AsAが40%程度の抑制効果であったのに対し、DHAは80%とさらに高い効果を示すことが明らかとなった。この効果は、サイレンシング能が低下したアラビドプシスの突然変異体では認められなかったことから、AsA同様サイレンシングを介して現れるものであると考えられた。これらの知見はDHAの抗ウイルス剤としての有用性を示すものであることから、Journal of General Plant Pathology (2013 in press) に発表した。 ハクサイではTuMVに対する抵抗性反応時にAsA蓄積量が増加するが、これが抵抗性反応の一つとして生じているのであればその誘導シグナルは抵抗性誘導シグナルと共通である可能性がある。そこで、H2O2、SA、JA、ABAの4種類のシグナル物質の処理によってハクサイでAsAの蓄積誘導が行われるか調べたところ、H2O2とJAでAsA蓄積量の増加が見られた。一方、AsA合成及び酸化・還元経路の遺伝子の発現パターンを抵抗性誘導時とH2O2及びJA処理時で比較したところ、JA処理時の発現パターンが抵抗性誘導時と類似したパターンを示した。これらの事実は抵抗性誘導時にJAによってAsAの蓄積誘導がかかることを示唆している。これよりAsAの蓄積はウイルスに対する新規の防御応答であると考えられたことから平成24年度日本植物病理学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度はおおむね研究目的に沿った成果が得られたと判断しており、その成果を原著論文としてJournal of General Plant Pathology (2013 in press) に発表した他、平成23年度日本植物病理学会北海道部会及び平成24年度日本植物病理学会で講演発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究成果に基づいて、今後下記の点を明らかにする。 1) 内在性のAsA量の増減がウイルス耐性に与える影響を評価するため、ウイルスベクターにDHA還元酵素遺伝子を組み込んだ感染性クローンを構築し、これをハクサイ・カブに接種してAsAの増減及びそれに応じたウイルス蓄積量の変動を解析する。 2) AsAはウイルスのサイレンシングサプレッサーとsiRNAの結合を阻害することで抗ウイルス性を発揮すると考えられているが、AsA自身が植物の防御反応を誘導する可能性についてはまだ明らかにされていない。AsAあるいはDHAをアラビドプシスあるいはハクサイ・カブに処理することで、PR遺伝子などの発現が誘導されるか明らかにする。PR遺伝子の発現が誘導される場合、防御反応のシグナル伝達に関わる各種mutantを用いてこの誘導に関わる植物ホルモンを特定する。 3) ハクサイ・カブ品種間には内在性AsA量に変異が存在する。この変異とウイルス耐性との間にどの程度相関が認められるか明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は研究計画の変更に伴って10,580円の執行残高が生じた。これについては、次年度実験用試薬類の購入に当てる予定である。
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