研究概要 |
ハクサイではカブモザイクウイルスに対する高度抵抗性の誘導と連動してアスコルビン酸の蓄積量が増加する。平成24年度までの結果から、このアスコルビン酸の誘導にはジャスモン酸がシグナルとして関与することが示唆されていたことから、本年度はまずジャスモン酸などの防御応答に関連する植物ホルモンについてウイルス接種後の消長を解析した。その結果、ウイルス接種後ジャスモン酸自体の蓄積量は低下するが、ジャスモン酸の活性体であるジャスモン酸イソロイシンやジャスモン酸に由来するチュベロン酸及びチュベロン酸グルコシドの蓄積量の増加が認められた。これらの結果から、ウイルス接種後一過的にジャスモン酸が蓄積していると考えられた。一方、サリチル酸やアブシジン酸はウイルス接種後減少する傾向にあった。以上の結果と平成24年度までの結果を合わせ、アスコルビン酸の蓄積誘導にはジャスモン酸が関与していると考えられた。 これまでの結果から、高度抵抗性と連動したアスコルビン酸蓄積量の増加の機構として、ジャスモン酸を介したアスコルビン酸酸化経路の抑制と酸化型アスコルビン酸還元経路の活性化が考えられた。しかし、これら経路に関わる酵素遺伝子(AO, APX, MDHAR, DHAR)についてはホモログが多く、またホモログ間でウイルス接種後の発現パターンが異なる場合もあって遺伝子発現解析の結果のみから結論するのは難しかった。そこで酵素活性レベルでも調べたところ、前述の仮説とよく一致する結果が得られた。ただし、AOについてはウイルス接種後活性が低下するのに対し、ジャスモン酸処理では活性が増加することが明らかとなった。このことから、ジャスモン酸が制御しているのはAPX, MDHAR, DHARの3酵素遺伝子で、AOについては別の因子が制御していると考えられた。
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