研究課題/領域番号 |
24580002
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
千田 峰生 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (30261457)
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研究分担者 |
佐野 輝男 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (30142699)
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キーワード | 黄ダイズ / 種皮着色 / CHS遺伝子 / RNA干渉 / ウイルス / 斑紋形成 / 低温着色 / 抵抗性品種 |
研究概要 |
黄ダイズは種皮着色抑制遺伝子の作用により種皮着色が抑制されるため、黄色を呈する。黄色の種子色はダイズ種子品質で最も重要な形質の1つであるが、ウイルス、突然変異、低温の外的要因により本来着色されない黄ダイズが全面あるいは部分的に着色されてしまうことがある。このような種皮着色現象は黄ダイズ品質を大幅に低下させることから、これを抑制できる品種の開発が重要となる。黄ダイズの種皮着色抑制はフラボノイド生合成に関与するカルコンシンターゼ(CHS)遺伝子のRNA干渉(RNAi)による(以降、CHS RNAi と表記)。種皮着色現象はウイルス、突然変異、低温によりCHS RNAi の作用が抑制されることにより起きる。 ウイルスにより生じる種皮着色現象を斑紋形成といい、低温による種皮着色現象を低温着色という。近年、低温着色に抵抗性を有する黄ダイズ品種「トヨハルカ」が育成された。本研究では低温着色抵抗性品種であるトヨハルカが斑紋形成にも抵抗性を示すかどうかについて調査するのが目的である。平成24年度の研究では低温着色抵抗性の黄ダイズ品種であるトヨハルカにダイズモザイクウイルス(SMV)による斑紋症状の軽減が認められた。 平成25年度はトヨハルカに認められたSMV斑紋症状の軽減を再確認した。複数年度で同様の結果が得られたため、トヨハルカが実際にSMV斑紋形成程度を軽減する可能性が高い。次にトヨハルカが有するSMV斑紋形成程度軽減作用の分子機構を明らかにするためにトヨハルカとコントロールであるトヨムスメについてSMV感染個体より種皮RNAを抽出し、CHS転写産物量の比較解析を行った。その結果、トヨムスメおよびトヨハルカ間にCHS転写産物量に有意差が認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
低温着色もウイルス斑紋形成もCHS RNAi の阻害による。低温着色に抵抗性を有するトヨハルカはウイルス斑紋形成にも抵抗性を示すかもしれないという考えのもと本研究を開始した。実際にSMV斑紋形成程度の軽減が複数年度にわたって認められ、トヨハルカがウイルス斑紋形成程度を軽減する能力を有した有用な黄ダイズ品種であることが判明した。
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今後の研究の推進方策 |
今後はトヨハルカが有するSMV斑紋形成程度軽減作用の分子機構を解明することが重要となる。SMVの斑紋形成はSMVが作り出すサプレッサーが CHS RNAi を抑制することによる。つまり、CHS RNAi の抑制で種皮におけるCHS転写産物量が上昇し、その閾値を超えた結果、種皮細胞が着色されるのが斑紋形成である。平成25年度の実験でトヨムスメおよびトヨハルカがSMV感染によってCHS転写産物量がどのように変化するのかを調査した。CHS転写産物量がSMV感染トヨムスメ>SMV感染トヨハルカである可能性が示唆されたが本実験ではそのような結果が得られなかった。その理由として、本実験に供試した種皮が300mg以上という十分に生長した登熟種子から単離したものであり、実際にトヨハルカに起きた斑紋形成程度の軽減作用は種子登熟初期に起きている可能性がある。したがって、平成26年度では登熟初期の未熟種皮からRNAを抽出してCHS転写産物量を測定比較する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度研究に要した使用額が想定額よりも少なく済んだため 次年度の研究遂行に必要な消耗品費に充てる計画である。
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