黄ダイズの種子は、種皮着色が抑制され、黄色を呈する。黄色の種子色はダイズの種子品質を左右するもっとも重要な形質であるが、ウイルス、突然変異、低温の外的要因により本来は種皮着色されない黄ダイズが全面あるいは部分的に着色してしまうことがある。このような種皮着色現象は黄ダイズの品質を大きく低下させることから、これを防止できるような品種の開発が重要となる。黄ダイズの種皮着色抑制はフラボノイド生合成に関与するカルコンシンターゼ(CHS)遺伝子のRNA干渉(RNAi)による。ウイルスや低温により生じる種皮着色現象をそれぞれ斑紋形成、低温着色という。低温着色に抵抗性を有する品種「トヨハルカ」が育成された。本研究では低温着色抵抗性品種であるトヨハルカが斑紋形成にも抵抗性を示すかどうかについて調査するのが目的である。実際、本研究で、トヨハルカにダイズモザイクウイルス(SMV)による斑紋症状の軽減が認められた。 平成26年度ではトヨハルカに見出された「SMV斑紋症状軽減」についての分子機構を明らかにするための研究を行った。SMV感染トヨムスメとSMV感染トヨハルカの未熟種子から種皮を単離し、そこから種皮RNAを抽出した。ノーザンブロット分析によってCHS転写産物量を測定比較した結果、SMV感染トヨムスメ>SMV感染トヨハルカであることが明らかになった。つまり、トヨハルカでは、SMV感染によってもCHS転写産物量がトヨムスメほどには上昇せず、それが斑紋症状の軽減につながる可能性が示唆された。
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