研究課題/領域番号 |
24580003
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
横井 修司 岩手大学, 農学部, 准教授 (80346311)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 育種学 / ストレス / シグナル伝達 |
研究概要 |
本研究は、重要作物・モデル植物であるイネと研究の進んだモデル植物であるシロイヌナズナを用い、生存限界に近い環境ストレスが植物生活環で最も重要な生存戦略である開花に及ぼす影響を分子レベルで解析し、その知見を植物が環境ストレスを回避して開花・結実することができるような育種へと応用することを目的とする。本年度は以下の実験を行った。 <シロイヌナズナを用いた実験> myb2、myc2、hb6の3つの遺伝子型の全ての系統と野生型であるCol-0のエコタイプを短日条件、あるいは長日条件で処理し、各遺伝子型の日長処理のみでの表現型を確認した。その結果、日長処理では全ての3つの遺伝子型では野生型と有意な差を確認することはできなかった。このことから、MYB2、MYC2、HB6は通常の条件下では開花に機能していないことが明らかとなった。また、これらの3つの遺伝子型と野生型であるCol-0のエコタイプに弱い塩ストレスを処理し、ストレス応答と開花表現型を調査した。ストレス応答の表現型として開花までの葉数、根の伸長具合を調査した。myc2、hb6の変異体では100mMの塩処理を行ったときに開花までの葉数が若干減少したが、根の伸長度合いには差異は認められなかった。このことから、用いた全ての変異遺伝子型においては弱いストレス条件下では開花に機能を持たないことが明らかとなった。 <イネを用いた実験> イネの晩生変異体(日本晴late・台中65 late)とそれぞれの野生型を用いて実験を行った。晩生変異体は長日・短日・自然条件の用いた全ての日長において野生型よりも著しい晩生の表現型を示した。また、発達段階における遺伝子発現解析を行ったところ、晩生変異体は開花のスイッチ遺伝子であるHd3a遺伝子の発現が認められず、日長条件によって開花を促進に切り替えるスイッチの機能が失われているとの結論を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ストレス経路と開花経路を統合する候補遺伝子の一部について解析を行い、シロイヌナズナについては調査した3つの遺伝子は統合する経路には機能を果たしていないことが明らかとなった。イネの晩生変異体の解析では、表現型が調査した全ての日長条件で認められること、遺伝子発現解析ではHd3aという開花に最も重要な遺伝子の機能が異常になることで遅咲きになっていることが明らかとなった。以上のことから、当初計画していた研究は概ね遂行された。
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今後の研究の推進方策 |
シロイヌナズナを用いた開花経路とストレス経路の統合因子の解析では、高温、低温を処理し、昨年度同様の解析を行う。得られた結果を前年度の結果を統合し、モデルを構築する。シロイヌナズナgi-3抑制変異体の原因遺伝子の単離では、抑制変異体の原因遺伝子をマッピングにより単離する。遺伝子同定後は機能解析を行うと同時に抑制変異の単一変異体を分離世代から単離する。イネにおける開花・ストレス経路の統合因子の検証では、平成24年度の調査で得られた表現型のデータを発現解析を合わせて分子レベルで説明する。また、相転移の分子マーカーとして近年同定されたmiR156, miR172の発現パターンを調査する。これらの結果から、ストレスに応答してmiRNAの発現量が増減し、相転移に関わるか否かの仮説を検証する。また、統合因子と推測された因子を発現抑制・過剰発現し、因子の相補性検定を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
繰越金がないため該当しない
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